古橋亨梧、伊藤洋輝、川辺駿の招集は? 日本代表“6月シリーズ”の戦い方

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第161回

古橋亨梧、伊藤洋輝、川辺駿の招集は? 日本代表“6月シリーズ”の戦い方

By 清水 英斗 ・ 2022.4.30

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6月のA代表スケジュールが発表された。2日に札幌ドームでパラグアイと試合を行い、6日は東京・国立競技場へ移動し、ブラジル代表と対戦。この2試合は『キリンチャレンジカップ』、国際親善試合となる。


その後は関西へ移動し、日本、ガーナ、チリ、チュニジアの4カ国がトーナメント形式で対戦する『キリンカップ』に参戦する。


日本は初戦、10日にノエビアスタジアム神戸でガーナと戦い、勝てば14日にチリ対チュニジアの勝者と決勝へ。負ければ敗者と3位決定戦を戦うことになる。


中3日で続く4連戦。この日程で4試合を勝ち抜くことは、ワールドカップ・ベスト8への道を想定したシミュレーションとも言える。とはいえ、オフシーズンの欧州組に過剰な負荷はかけられないので、試合ごとに目的を作り、大きくターンオーバーしつつ、4試合を戦うことになるのではないか。



相手に応じたメンバーの使い分け


対戦相手のうち、パラグアイとチリは南米予選で敗退しており、カタールワールドカップには出場しない。おそらく両代表は、次の大会を見据えて、新チームが意識された構成になるのではないか。


逆にブラジル、ガーナ、チュニジアはワールドカップの出場権を得ているので、日本と同じく、半年後の本番を意識した完成度の高いチームでやってくるはず。


そうした対戦相手の属性を意識しつつ、たとえばパラグアイ戦はこれまで招集や出場の機会が少なかった選手がトライする場とし、ブラジル戦とガーナ戦はフルメンバーで挑戦。


最後のチリもしくはチュニジア戦は、それまでの疲労やパフォーマンスを見つつ、パラグアイ戦等で活躍した選手を積極的に加えて仕上げる。といった具合に、試合の目的と選手のコンディションを調整しつつ、進めることになるだろう。


W杯の大事な初戦、対ドイツを最も想像しやすいのは、やはりブラジルだ。圧倒的な攻撃力に晒される中で、森保ジャパンが標榜する「良い守備から良い攻撃」がどれだけ通用するのか。


自陣に構えた守備のストレステストにもなる。ブラジル戦の挑み方、戦略には注目している。仮にそれがどうにもならないパフォーマンスであれば、南アフリカ大会の中村俊輔、ロシア大会の本田圭佑のように、絶対的主力、影響力が大きい選手の本番スタメン落ちもあり得る。



新戦力の招集は?


新戦力を試せる試合は、ともすればパラグアイ戦だけかもしれないが、期待できる選手は多い。シュトゥットガルトの伊藤洋輝は、左利きの長身センターバックとして、3バックへの変化を踏まえて組み入れたい選手だ。


また、スイスのグラスホッパーで主力として活躍し、今季7ゴールを挙げている川辺駿も、守田英正や田中碧の位置を担うバックアッパーとして招集したい。


そして、ケガで長らく戦列を離れていたが、セルティックの古橋亨梧は、今回のワールドカップに挑む日本代表のキープレーヤーと見ている。ドイツやスペインと戦うなら、尚更だ。カウンターの牙になる古橋は絶対に欲しい。彼のスピードや飛び出しを、2トップ型の連係で高めることも、この6月に済ませておきたい。大きな武器になるはずだ。


ワールドカップに向けて、6月の4試合、9月の2試合、そして本番前の11月に1週間強という短い準備期間がある。どうステップを踏んで行くべきか。


前回大会で森保監督はコーチとして西野ジャパンに帯同したが、正直その経験はさほど役に立たないのではないか。


粘土の塊をざっと集めて、そこから少しずつ造形を進め、本番までに完成させるモデリングのような西野監督のチーム作りは、大会前のキャンプ期間が充分にあってこそ。今回は時間が無いので、9月までに部品を作り終え、11月は組み立てるだけ、といった計画的なライン作りが重要になる。


今の段階でも、川崎セットを始めとした連係の部品はあるし、セットプレーもかなり改善された。ただし、まだバリエーションは少ない。アジアでは経験がない、相手に押し込まれることを想定した部品も必要だ。


それは5バックというシステムもそうだが、より強いDF、より走れるMF、よりスピードに長けたFWへのターンオーバーも含まれる。こうした連係の部品補強は、6月に済ませたい。


6月シリーズへ、高まる期待


6月の強化試合が終わった後、どんな雰囲気になっているだろうか。


仮にブラジルにぼろ負け、他の3チームにも1勝も出来ず。そんな事態になれば、かなり否定的なムードになるだろう。森保解任論も現実的か否かにかかわらず、ヒートアップしそうだ。


しかし、そうした逆風、誰にも期待されない状況から火事場の力を出し、結果を残したのが、南アフリカ大会やロシア大会だ。ある意味、大会前のネガティブなムードこそ、日本代表の必勝パターンではある。


しかし、それでたどり着けるのは、ベスト16が限界だろう。ベスト8を争う決勝ラウンド1回戦は、その大会の好調チーム同士の戦いだ。単なる勢いとか、サプライズとか、鬼気迫る気持ちとか、それだけでは勝てない。なぜなら決勝ラウンドに勝ち進むチームは、皆それを持っているからだ。


本物のベスト8への期待感。それを生み出すパフォーマンスを、この6月に見せてほしい。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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