FIFA ワールドカップ前、最後の強化試合になるカナダ戦が、17日の22時40分(日本時間)キックオフ予定だ。
すでにカタール・ドーハ入りを済ませた森保ジャパンだが、カナダ戦はUAEのドバイで行われる。ドーハからドバイは、飛行機で1時間20分ほど。ワールドカップ開幕を控えたカタールでは親善試合を行うことが難しいため、中東の近隣国へその場を求めた。
日本以外にも、ドイツは17日同日にマスカットへ移動してオマーン代表と、コスタリカはバスラへ移動してイラク代表と、スペインはアンマンへ移動してヨルダン代表と、それぞれ親善試合が予定されている。
ワールドカップ出場国同士で試合を行うのは、この組では日本だけなので、マッチメークは優秀と言えるかもしれない。
各チームの目的もあるが、日本は手応えのある本番向けのチームと戦うことを選択した。正直、けが人がこれ以上……と思うところはあるが、本番が消化不良に終わるよりはいい。
左サイドに注目
カナダ戦の注目の一つは、左サイドだろう。9月のアメリカ戦では久保建英が見事にプレッシングを機能させ、一躍スタメン候補に上がった。しかし、今まで久保はトップ下や右サイドでプレーすることが多かったため、彼と連係を確立させた左サイドバックがいない。
アメリカ戦で久保と共に出場した中山雄太は、怪我で欠場となっている。伊藤洋輝が入るにせよ、長友佑都が入るにせよ、久保との連係向上は必須だ。
それはハイプレスだけでなく、自陣に下がった状況でも言える。ドイツは右サイドにホフマンが入ったとき、周囲との連係で仕掛けるケースが多く、クロスターマンやケーラーなどのDFも後方からオーバーラップしてくる。
その対応は、久保も関わらなければならない。単純に久保が付いて行くのか、あるいはサイドバックが張り出してボランチにカバーさせ、久保は中盤のスペースを埋めるのか。意識として、大外のクロスはある程度入れさせてもOKとし、カウンターの充電をするか。いずれにせよ、左サイドの連係は整理しなければならない。
カナダ戦の左はドイツ戦でも?
そのタイミングを含めた感触は親善試合で確かめ、本番までに調整したいところ。カナダ戦の左サイドは、そのままドイツ戦でも起用されるのではないかと予想する。
久保には、東京五輪の3位決定戦後に流した涙を思い出してほしい。もう二度と、あんな消化不良で涙を流すことがないように、バッチバチの準備を。忌憚のないコミュニケーションを。
中と外を素早く使い分けてくるドイツに対し、両サイドハーフのポジション判断は、最も大きなカギを握る。
5バックは守備が安定する
ドイツ戦に、森保監督がどのシステムを選ぶのかも注目だ。
普通に考えれば、9月のアメリカ戦と同じ4-2-3-1(守備4-4-2)だが、ドイツの直近の試合を見ると、ハンガリーやイングランドといった対戦相手が5バックを組み、守備の安定とカウンターを両立させている。
この5バックをドイツが積極的に崩しに行った場合、構造的にサイドで被カウンタースペースが空くため、ドイツは少しやりにくそうに見えた。
森保ジャパンは5バックが基本ではないが、4-4-2でプレスをかけつつ、中盤を打開されれば、伊東純也が人に付きながら最終ラインまで下がるのが通例だ。結果的に5バック化する時間は多いかもしれないし、そのほうが守備は安定する。
ただし、その動的な変化を、ドイツのスピードに上回られたら一大事だ。ドイツの縦パスは極めて速い。また、あの速さのクサビを正確に落とす前線の技術もすごい。
動的ではなく静的に、先に5バック化してスペースを埋めて構えるほうが、ドイツのスピードを吸収できる。ハンガリーやイングランドがやったように。
ドイツ戦へ向かう準備を
ただし、その場合はハイプレスが厳しくなるし、第一、森保ジャパンは序盤から5バックで構える戦い方はほとんどやっていないので、慣れもない。となれば、やはり動的な5バック形成か。より一層、両サイドハーフには難しい状況判断と、大きなハードワークが求められる。
もっとも、そうした森保ジャパンの動的ないしは静的5バックが機能したとしても、ドイツがここ数試合苦しめられた5バックへの対策を、ハンジ・フリック監督が考えないわけがない。
日本戦に限らず、大会全体を踏まえても必要なポイントだろう。サプライズでメンバー入りしたマリオ・ゲッツェ、初招集のムココ、フュルクルク辺りはその対策の一環か。情報の少ない伏兵が、後半から入ってくるケースは想定しなければならない。
まあ、その辺りはカナダ戦が終わった後でも充分として、まずはサイドハーフの立ち位置がカギを握る守備を、機能させること。ドイツ戦へ向かう大前提を、カナダ戦で確立させたい。(文・清水英斗)
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