公開された森保ジャパンのトレーニングから見る、コスタリカ戦の狙いとは?

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第177回

公開された森保ジャパンのトレーニングから見る、コスタリカ戦の狙いとは?

By 清水 英斗 ・ 2022.11.25

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試合の翌日、アクティブレスト(積極的休養)を行う出場組と、高負荷のメニューを消化して次戦に備えるサブ組に分かれて行うトレーニングは、メディアへ全公開されることが多い。


FIFAワールドカップのドイツ戦に勝利した翌日、コスタリカ戦を控える森保ジャパンのトレーニングも同様に公開された。


パス&コントロールの基本練習、ダブルボックス(ペナルティーエリアを2つ繋げた大きさ)で行われるゲーム形式など、サブ組は様々なメニューに1時間半ほど取り組んだが、その中で一つ気になったメニューがある。


それはクロスからのシュート練習だ。ペナルティーエリア内に相手DFに見立てた人形を4つ配置し、選手は4つのポイントに散らばる。


右サイドには山根視来、左サイドには伊藤洋輝と相馬勇紀。中央の低い位置には谷口彰悟と守田英正。中央の高い位置には上田綺世と町野修斗、柴崎岳が立ち、守田と柴崎は途中でポジションを入れ替えた。


谷口と守田でパスを何本かつなぎ、横内昭展コーチがポストプレーに入るなどした後、サイドへ展開。あとは両サイドから折り返してシュートするシンプルな練習だ。


ペナルティーアーク付近が空く


最初に山根はボールを止めてからクロスを入れたが、横内コーチから「ワンタッチで!」と大きな声。「グラウンダーで!」とも言う。状況的にはアーリークロスを想定した内容だった。


その後、より長い時間がかけられたのが、ペナルティーアーク付近へ、マイナス気味に折り返すパターンだ。


上田や町野、柴崎らは、ゴール前へ入っていく動きの中で止まり、ボールへ少し寄る。エリア内に置かれた人形の手前で、折り返しをフィニッシュ。


最初に上田がそれをやってみせると、横内コーチから「それ! 綺世、その入り方! 相手はいないけど」と声が飛んだ。


おそらく、コスタリカ戦を意識した内容だったのではないか。


コスタリカはサイドを突破されると、最後はゴール前を固めてくるので、その手前のペナルティーアーク付近が空きがち。


今年9月に行われた韓国との親善試合では、まさにこのスペースで、ファン・ヒチャンがゴールを挙げていた。日本も、その狙いに抜かりはない。


クロスからのシュート練習


この日のトレーニングはコンディション調整、フィジカルへの負荷のかけ方が最も大きなテーマには違いない。


とはいえ、サッカーの練習は何か一つだけを目指して組まれるわけではない。単なるウォーミングアップにも、監督からの技術的&戦術的リクエストが含まれ、個性が出てくるものだ。


このクロスからのシュート練習は、それが詰まっていたのではないかと思う。


また、ペナルティアーク付近への折り返しは、山根と伊藤の両サイドバックが行い、相馬に関してはカットイン+ミドルシュートが指示された。


これも試合を想像しやすい。アーリークロスなら相馬が入れる機会も多いが、コスタリカがゴール前まで下がった状況を考えると、相馬には縦ではなく、ミドルシュートのチャンスが見えてくる。


両サイドバックはオーバーラップしてアーク付近への折り返し。両サイドハーフはカットインしてのシュート。まさにコスタリカには、そんなパターンが有効になるはず。


相馬、堂安のスタメン?


となると、相馬、堂安律のスタメンもあり得るかもしれない。特に相馬は調子が良さそうだった。


柴崎にも期待したい。アーク辺りからのシュートとなれば、彼は間違いなく本物を持っている。守田とコンビを組むイメージは今ひとつ湧かないが、出場すれば切り札になれる。練習でも柴崎はゴラッソを決めていた。コスタリカ戦に向け、抜かりはない。


もっとも、コスタリカがイメージ通りの彼らであるかどうかは、少し気にかかる。


想定としては堅守カウンターが濃厚だが、11月10日に行われたナイジェリアとの親善試合では、ビルドアップを主なテーマにした様子があった。


主力の半数ほどは参加していなかったが、ボランチがサイドに下りる等、3枚回しを含めた可変系を何パターンか試しており、少し不気味だ。


勝つしかないコスタリカ


第1戦でスペインに0-7で敗れたことを踏まえれば、コスタリカとしては、いよいよ勝つしかない状況。本当に堅守カウンター想定で合っているのだろうか、という気もしている。


もちろん、コスタリカがビルドアップに注力したとしても、あまり質は高くなかったので、脅威というほどではないが、仮に日本が思い切ってターンオーバーを行った場合、単純な3枚回しへの可変にプレッシングをかみ合わせられるか。その点は、気がかりだ。


スペインが7点も取ったことで、このグループはややこしくなったが、日本も大量得点を取ろう……と色気が出て傲慢になると、足元をすくわれるリスクがある。


もっとも、森保監督はそういうタイプではないと思うので、ドイツ戦で急上昇したカリスマ性をもって、チームの引き締めにかかるだろう。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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