いよいよコスタリカ戦。ドイツ戦に続き、“構造の壊し合い”に勝ちたい

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第178回

いよいよコスタリカ戦。ドイツ戦に続き、“構造の壊し合い”に勝ちたい

By 清水 英斗 ・ 2022.11.27

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ドイツ戦は、お互いに構造の破壊がテーマだった。


今までにも書いてきたが、森保ジャパンの4-4-2守備は、発足当時から『左高右低』の仕組みを持っていた。中島翔哉が南野拓実に変わっても、南野が久保建英に変わっても、それは同じだ。


必要に応じて最終ラインまで下がり、4バックをカバーする5枚目の守備をするのは右サイドの堂安律や伊東純也であり、主に左サイドは高い位置を取る。相手が3枚回しなら、左サイドハーフの久保の側から前へかみ合わせる。


この『構造』を、ドイツは壊してきた。マッチレポートでも書いたが、トーマス・ミュラーが久保の背中を取り、プレスを無力化させる。すると日本は、前へアグレッシブな守備に行くタイミングを失った。


ドイツが破壊した日本の構造


さらにミュラーの暗躍に田中碧が引きつけられ、ヨシュア・キミッヒやイルカイ・ギュンドアンがフリーになれば、前田大然や鎌田大地が下がるしかなく、最終的に逆サイドでニコ・シュロッターベックが浮く。


『右低』の伊東は、ジャマル・ムシアラとダビド・ラウムに対して数的不利の酒井宏樹をカバーするために下がるので、シュロッターベックはどうしてもフリーになりやすい。


ミュラーで起点を作った後、最終的に彼とラウムがフリーになる場面が、前半途中から激増し、2点目を食らってもおかしくなかった。このあたりは、ドイツが『左高右低』の日本の構造を壊していた。


マンツーマンで対抗


ただし、日本もやられっぱなしではない。後半は日本がドイツの構造を壊した。3-2-5のビルドアップに、5-2-3で当てはめるという単純なマンツーマンだ。


ドイツは攻撃時の立ち位置がはっきりしている。規則、基準がはっきりしているからこそ、分析の落とし込みは明確にできる。つまり、はめやすい。


しかも日本は久保を外してシステムを変えたことで、ドイツのビルドアップの基準点になっていた選手を消した。相手は少し戸惑っただろう。


結果はご承知の通りだ。ドイツ対日本は、互いの基本構造の壊し合いだった。


ただ、それをスタメンからやってきたハンジ・フリックと、ハーフタイムまで待った森保一に個性の違いはある。切り札は先に見せるな。見せるなら、さらに奥の手を持て。今回は森保監督が結果を得た。


コスタリカの構造


さて、次はコスタリカ戦だ。この対戦相手はどんな構造を持っているのだろうか。


普通に考えれば、守備は基本的に4-4-2。中央固めなので、サイドが突破口になる。そのパターンは前回コラムで書いたように、日本代表もトレーニングしている。


ただし、7失点で敗れた後だ。序盤からハイプレスで襲いかかってくる可能性はある。それを逆手に取るなら、ロングボールでも良いが、エースFWのジョエル・キャンベルは他の選手に比べるとハードワーカーではないので、彼の横にボランチを下ろし、数的優位を作れば、プレスをかわしてボールを運びやすいのではないか。


コスタリカのカウンターについては、サイドハーフのジェウィソン・ベネットのスピードが要警戒だが、そこへ至る前に、中央でキャンベルが起点になる。


左利きで懐が深く、独特のボールの持ち方をする選手だが、プレーのリズムは遅いので、素早く挟んでボールを奪いたいところ。そんなことを繰り返せば、キャンベルは苛立ってくる。心理的にも試合をうまく進めたい。


可変ビルドアップに取り組む


前半のコスタリカは、プレッシングとショートカウンターをねらって来る可能性が高いが、後半は変化があるのではないか。


11月10日に国内で行われたナイジェリアとの親善試合では、主力を半分ほど欠いていたが、3枚回しなどの可変ビルドアップに取り組んでいた。


キープレーヤーは、MFダグラス・ロペスだ。彼がサイドへ下りる、開くなどして、サイドバックを押し上げ、起点を作る。彼のポジション横断に味方が呼応し、可変ビルドアップを作っていた。


この時期に意味がないことはやらないはず。スペイン戦ではロペスの出場機会は無かったが、例えば今回、日本が先制して1-0になった後、日本が少し守備を固め始めた後半などに、コスタリカが彼を投入してくる可能性はある。


構造の壊し合いに勝ちたい


2019年のアジアカップ準決勝でイランと対戦したとき、イランはMFアシュカン・デヤガが同じようなサイドへの移動で、可変ビルドアップを作り出していた。それに似ている。


当時、日本はその攻撃を封じて3-0で勝ったが、今回も可変のコントローラーになる選手を見極め、潰したいところだ。


コスタリカはどう出てくるか。基本は堅守カウンターだが、ハイプレスかロープレスか。


一方で彼らには3枚回しへの可変ビルドアップの意思も観測される。それによって日本のプレッシング構造が壊されるとまずい。


ドイツ戦に続き、構造の壊し合いに勝ちたいところだ。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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