2017年10月6日から、FIFAU-17ワールドカップがインドにて開幕する。いずれはA代表のワールドカップ開催をとも目論むアジアの新鋭国での開催で、チームを率いる森山佳郎監督の掲げた目標は「ファイナリストになり、世界での7試合を戦うこと」。
日本が世界大会のファイナル進出を目指すとなると、単なるスローガンにも聞こえてしまうかもしれないが、選手の肌感覚は違う。FW久保建英(FC東京U-18)が「具体的に想像した中で口にしている目標」と言うように、この目標が単なる夢物語だと思っている者はいない。
ショートカウンターの威力も増しつつある
このチームは、日本サッカー積年の課題である得点力不足とは無縁に近く、昨年から今年にかけて、外国勢を相手に無得点で終わった試合はわずかに3回。うち2回は“お試し要素”の強い試合だったので、攻撃陣にベストメンバーをそろえた試合に関しては昨年3月のイラン戦(0-0のドロー)が唯一の例外となる。
ボールを持って支配するスタイルがベースだが、森山佳郎監督がチーム結成から追求してきた日本人らしからぬ「ボールを奪う」守備とスピーディーな切り替えの部分が形になってきており、相手にボールを持たれた状況からのショートカウンターの破壊力も増している。
過半数の選手がチーム結成当初から選ばれている選手たちということもあり、あうんの呼吸での崩しもある。今年に入ってからは、世界大会仕様のチーム作りとして、組織的なポゼッションプレーと大人の試合運びとでも言うべき要素に注力しており、それも着実に形になってきた。
注目の久保はFW起用が濃厚
久保がU-20に「昇格」して不在という中でのチーム作りになったこともネガティブな要素にはならなかった。むしろ、この間にFW中村敬斗(三菱養和ユース)やMF上月壮一郎(京都U-18)といった選手がサイドハーフで抜群の存在感を見せる着実な成長を遂げており、チームとしての選択肢も広がっている。この結果、昨年のアジア最終予選では久保をサイドハーフに置く形が多かったが、今回は久保はFW起用がベースになりそうだ。
主軸の離脱は痛手だが・・・
9月27日から始まった静岡県内でのトレーニングキャンプでも、初日からチームのベースラインの高さを感じさせる内容だった。結成当初から追求し、要求してきた球際の強さや切り替えのスピード感、そしてその激しさの中で発揮される技術と、リラックスムードの初日でありながらバトルの要素も漂う密度を持ったトレーニングを実施。中村も「結構いい感じでやれた」と手ごたえを話したように、チームとして確実に積み上がってきている感覚を選手も得ているようだった。
ネガティブな要素としては、大会直前に守備の要だったDF瀬古歩夢(C大阪U-18)が負傷離脱してしまったことと、切り札と期待されていた高校1年生のFW斉藤光毅(横浜FCユース)が鎖骨骨折からの復帰途上にある点はある。
特に瀬古はチーム結成以来の主軸選手だっただけに周囲の動揺も大きく、簡単に埋まる穴でないのも明らかだが、それによってチームへの期待値が打ち消されるわけではない。
インド開催は日本に有利
最後にもう一つ日本のアドバンテージを挙げておくと、開催国がインドだということだろう。昨年のアジア最終予選ではその環境にオーストラリアが音を上げていたが、気候も虫や動物も料理も水もトイレも独特な部分があり、簡単に適応できるものでもない。もちろん、日本側も最終予選終了後に加わったインド初体験組の8名については不安もあるが、人生3度目のインドという頼もしい経験者11名も主軸選手に名を連ねており、やはりアドバンテージと言っていいだろう。
目指すは世界での7試合。簡単な目標でないことは言うまでもないが、別に非現実的な夢物語でもない。地に足を着けながら、一戦一戦を突破するうちに見えてきても不思議ではないターゲットである。まずは10月8日のホンジュラス戦から、2000年以降に生まれた選手で構成される新世代の日本代表の戦いが、幕を開けることとなる。(文・川端暁彦)
写真提供:川端暁彦