メンバー発表は11月1日。 FIFA ワールドカップに向けた「森保構想」は固まった?

COLUMN川端暁彦のプレスバック第57回

メンバー発表は11月1日。 FIFA ワールドカップに向けた「森保構想」は固まった?

By 川端 暁彦 ・ 2022.10.1

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9月シリーズのメインテーマはサバイバルではない。前回のコラムでそう書かせてもらったが、遠征が終わっての感想も同様である。2試合を終えて見えたのは、「誰が生き残るか」といった話ではなかった。


1戦目のアメリカ戦と2戦目のエクアドル戦を“総入れ替え”で臨んだ森保一監督だが、この2試合で先発したメンバーが構想内ということだろう。


2試合で先発した22名に第3のGKを加えると、残る枠は3つ。ここに3人の不参加組(板倉滉、浅野拓磨、大迫勇也)が戻ってくる可能性を加味すると、いわゆる新顔の入る隙間は0~2枠といったところか。


もちろん、過去のW杯を思い出しても、ここからコンディションを落とす、負傷するといった選手が出てくるケースはあり得るのだが、基本線は既に固まっていると観るべきだ。


その上で、このシリーズの力点は「誰が生き残るか」ではなく、「誰を誰とどう組み合わせてどう使うか」を見極める、あるいは諦める点にあったのだと思う。


特長を活かした相馬


エクアドル戦では三笘薫の起用法、南野拓実のトップ下、6月シリーズからの台頭でA代表経験に乏しい伊藤洋輝のCB先発起用といくつかのポイントが挙げられる。


個人的には、E-1選手権からメンバーに滑り込んでいた相馬勇紀の起用に注目していた。このシリーズでは数少ない、“生き残り”が焦点になる選手だからだ。


相馬の特長は、ドリブルでの打開力を備えた技巧派ウイングでありながら、走力と馬力を備えており、攻めだけでなく守備でも貢献できること。日本のサイドハーフ、ウイング候補は攻撃に特長を持つ選手が多い半面、守備の期待値はそれほど高くない選手が多い。


これは守備で頑張らせることで、攻撃面の特長が消えてしまう選手が多いということでもあるのだが、相馬はウイングバックやサイドバックもこなせるタイプで、守勢の展開も苦にしない。右サイドでもプレーできることもあり、戦術的なオプションになり得る選手だった。


その相馬は試合途中から左サイドに入り、まさに“オプション”たり得るところを示唆してくれた。5バック採用時の左ウイングバックの人選は森保ジャパンの泣き所の一つだったが、相馬という選択肢は“あり”に思える。少なくとも、森保監督が最後に悩む数名には入ってきそうだ。


メンバー発表は11月1日


負傷から復帰途上の選手たちといった不確定要素は当然あるが、森保監督の頭を悩ますであろう選択肢は「左サイドバックに誰を選ぶか」といった分かりやすいものではもはやないだろう。「ジョーカーになるFWをもう1枚選ぶか、戦術的なオプションになるMFを選ぶか」といった選択肢になってくるはずだ。


たとえば、上で名前を挙げた相馬か、それとも中盤の変化球として旗手怜央をとるか、あるいは切り札として上田綺世を選ぶかといった、ポジションを超越した3択問題のような悩み方になってくるはずだ。


もちろん最後は指揮官の決断次第と言うしかない。ただ、交代枠5枚をフル活用しつつ、試合ごとに選手も入れ替えていくような采配を想定しているのは間違いないので、後ろではなく前を厚くする人選になるのではないかと予想する。


メンバー発表は11月1日。いわゆる“サプライズ選出”はないだろう。もしあるとしたら、負傷者が続出する、コロナ禍に飲み込まれるといったレアケースで、あまり想像したくないところもである。


早めの発表にしたのも、森保監督が最後まで選手を見極めないと決断できないという心理状態ではなく、既に腹をくくっていたから。


W杯に向けた「森保構想」は固まったと見ていいだろう。(文・川端暁彦)


写真提供:getty images

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川端 暁彦

川端 暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカー批評』『サッカーマガジンZONE』『月刊ローソンチケット』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。2014年3月に『Jの新人』(東邦出版)を刊行

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