UAE戦、タイ戦の選手起用に垣間見えたハリルホジッチのパーソナリティ

COLUMN元日本代表GKコーチ リカルド・ロペスの Bird's-eye view②

UAE戦、タイ戦の選手起用に垣間見えたハリルホジッチのパーソナリティ

By LEGENDS STADIUM編集部 ・ 2017.4.27

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FIFAロシアW杯アジア最終予選の山場だった、2017年3月に行われたUAE戦(2-0)、タイ戦(4-0)を連勝し、グループBの首位に立った日本代表。この2試合のポイントはどこだったのか? レジェンドスタジアムは日本代表を語る上で、最適な人物に分析を依頼した。アギーレ前監督とともに日本代表スタッフの一員としてGKコーチを務め、ハリルホジッチ体制下でも手腕を奮ったリカルド・ロペス氏だ。現在はアーセナルSS市川のテクニカルダイレクターとして、日本の育成年代の指導にあたっているリカルド氏に、ハリルホジッチ監督の人物像や香川真司選手、岡崎慎司選手のプレーなどについて語ってもらった。


私は2016年7月までハリルホジッチ監督とともに仕事をしました。私が思う彼の印象は、とてもプロフェッショナルで気が強い人だということです。すべてをコントロールすることを好み、チームに関わることはどんな些細なことも知っておきたいタイプの監督です。非常に情熱的で野心を持った人物で、周りの人にも仕事に対する情熱やハードワークを求めます。


UAE戦でのハリルホジッチ監督の選手起用は、これまでと違う点が2つありました。前回の記事でも触れましたが、川島永嗣選手のスタメン起用。そしてもう一つが、同じくベテランの今野泰幸選手をインサイドハーフで起用したことです。このハリルホジッチ監督の選手起用はピタリと的中しました。とくに今野選手の活躍は素晴らしかったです。


彼はすごく重要な選手です。私は代表チームのために働いていた頃から、彼のプレーがすごく好きでした。試合を読む力がある選手で、ポジショニングも良く、必ずボールを奪いに行こうとします。UAE戦の2点目は良いタイミングでゴール前に進入し、素晴らしいコントロールでシュートを決めました。インサイドハーフに必要なプレーを理解し、攻守ともに多くの貢献をしたと思います。


これまで、ボランチの中心はキャプテンの長谷部誠選手でした。しかし、彼はひざの手術のために代表を離れ、タイ戦では酒井高徳選手が起用されました。それまでサイドバックとして起用されていた酒井選手ですが、ボランチとしてもリスクの少ないプレーで中盤を安定させたと思います。とくにチームのバランスをとり、攻守に安定性をもたらすプレーができていました。


タイ戦で見えた攻撃の形


タイ戦は私も埼玉スタジアムで観ていましたが、タイは前線からプレスをあまりかけてこなかったので、最終ラインやボランチの選手は比較的自由にプレーすることができていていたと思います。しかし、香川真司選手など、1.5列目の選手にはしっかりマークをしていたので、センターバックの吉田麻也選手、森重真人選手がボールを持ったときに、パスの出しどころがなく、何度かパスミスをしてしまう場面がありました。ここは注意すべきところです。


攻撃は良い形ができていました。サイドから相手を崩して、久保裕也選手が良いクロスをあげて、香川選手が素晴らしいコントロールからシュートを打ちました。相手に止められましたが、前半18分の山口蛍選手のミドルシュートも素晴らしかったです。日本の攻撃の良さ、日本の選手の良さが出たプレーであり、個人的にすごく好きな形でした。このように、焦らずにボールを回す、ピッチを広く使ってパスを回す事は日本にとって必要なプレーです。


この試合で先制点を決めた香川真司選手ですが、彼はテクニックとスピードを兼ね備えた選手です。ドルトムントという欧州の強豪でプレーするクオリティを持った選手で、チャンピオンズリーグで戦う上では、全ての面で高いレベルが求められますが、うまくプレーしていると思います。非常に高いポテンシャルを持った選手なので、世界のトップレベルにはまだ到達していませんが、どんどん伸びていく選手だと思います。



岡崎慎司は“ルチャドール”


タイ戦に話を戻すと、2点目の岡崎選手のゴールも素晴らしかったです。サイドからのクロスにあわせて、素早く反応して頭から飛び込む姿は、まるでルチャドール(空中戦の得意なプロレスラー)のようでした。彼の特徴が良く出たゴールだったと思います。このゴールで日本が試合の流れをつかみ、心理的にも優位に立つことができました。その意味では非常に価値のあるゴールでした。前半の日本は3回効果的な形で相手のペナルティエリアに入り、そのうち2回をゴールに結びつけています。特筆すべき、決定力の高さです。


日本の守備は固く、前線にクオリティの高い選手がたくさんいます。失点しにくいチームなので、日本からゴールを奪うのは難しいでしょう。アジア予選の日本は得点をとることができるチームです。先に点を奪えば、相手は攻めてこなければいけません。その意味でUAE戦、タイ戦ともに先制ゴールを奪い、相手を前に出させたところで追加点を奪うという、理想的な攻撃の形ができていました。これは、次のイラク戦、オーストラリア戦、サウジアラビア戦でも継続していきたい試合運びです。日本はそれができるチームだと、私は確信しています。

写真提供:getty images,legends stadium

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