日本代表の森保一監督は12月10日にスタートする『EAFF E-1サッカー選手権』に臨む、22人のメンバーを発表した。本来の登録は23人だが、残り1人は週末に行われるJ1の最終節を待って確定すると言う。
「皆さんもご存じのとおり、大会はIMD(国際マッチデー)ではないので、選手の拘束力はありません。そういう意味で、国内選手中心の編成となりました。ただ、近隣諸国とのプライドを賭けた公式戦なので、日本サッカー界で、しっかりした戦いをすることが大事だと思います」
そう挨拶した森保監督の選考で、ポイントとなったのが東京五輪世代となるU-22からの選出だ。今回は初招集の10人を含む、12人がU-22から選ばれた。その中にはJリーグで主力として活躍している選手もいれば、出場機会を得られていない選手もいる。
日頃Jリーグを取材している立場として見れば”ベストメンバー”をE-1選手権の舞台で観られない残念さはあるものの、A代表とU-22代表と兼任し、来年の東京五輪はもちろん、その先を見据えて、1つのラージグループと考える森保監督のプランニングも理解できる。
同日に発表されたU-22ジャマイカ戦のメンバーとの線引きがされているわけではないが、E-1の結果と来年1月にタイで行われるAFC U-23選手権を短期、東京五輪を中期、W杯アジア最終予選からカタールW杯の本大会までを長期と想定すれば、それらを総合的に組み上げ、年末に天皇杯が控えるクラブとの交渉結果あるいは配慮を加味して、今回の編成になったと言うことだろう。
注目の初選出、仲川輝人
そうした状況で唯一、U-22以外で初選出となった仲川輝人に関しても、昨日今日で評価が上がった選手ではない。森保監督は「得点という結果、チームでの存在感も代表にふさわしい活躍をしているということで選ばせてもらった」と前置きしながら、こう続けた。
「11月も初代表の選手をJリーグから選ばせてもらったが、仲川も同様にこれから先の日本代表の戦力になり得る可能性を持っていると思う。一度、代表の活動を経験してもらいながら、代表のコンセプトを理解してもらうこと。チームで活躍するのはもちろんですが、チームで活躍した先には代表へのプレーがあること、誇りを持って戦える場があることを知ってもらえれば」
もしかしたら仲川も11月のベネズエラ戦で候補に挙がっていて、人数の関係もしくは怪我明けという理由で外したのかもしれない。ベネズエラ戦後のJリーグにおける仲川の活躍は特筆に値するものだったが、専門的な見方をすれば、パフォーマンスそのものはより早い段階で選ばれてもおかしくないものだった。
ただ、9月、10月のW杯アジア二次予選は、これまで招集してきたメンバーを主体に戦う必要があり、仲川はベネズエラ戦のメンバー選考の少し前に右太ももを痛め、復帰したのがメンバー発表直前の時期だった。
そのベネズエラ戦で招集された国内組から、今回のメンバーから外れた選手、引き続き招集された選手がおり、森保監督なりの評価やチーム事情、コンディション、U-22との兼ね合いを総合的に判断した結果だろう。その点に関しては、わかりやすい基準に従って選んでいるわけではないため、ファンやメディアにとってもスッキリしにくい選考になった。
残り1名はDFが選ばれる可能性が高い
そうした事情を踏まえながらメンバー構成を考えた場合、残り1枠がDFに割り当てられる可能性は高い。ただ、それがセンターバックなのかサイドバックなのかは、3バックをメインにするのか、4バックをメインにするのかで違ってくる。もっとも橋岡大樹(浦和レッズ)のように、3バックの右とウィングバック、4バックのサイドバックをスムーズにこなせる選手を加えれば、試合や状況に応じて2つのシステムを使い分けることも可能となる。
同じく複数の守備的なポジションをこなせる原輝綺(サガン鳥栖)もいるが、怪我をしており、来年1月のAFC U-23選手権に間に合う見込みだとしても、E-1選手権は見送られる可能性が高い。
いずれにしても、残り1名はJ1最終節を待って発表されるが、ほぼJ1残留が決まっているものの、確定はしていない浦和レッズの結果を待って橋岡が入るというのが妥当で、あとは現時点で19人の発表にとどまっているU-22ジャマイカ戦の候補も含めて、湘南ベルマーレや名古屋グランパス、清水エスパルスの選手も対象になるはずだ。
ただし、清水は12月21日に天皇杯の準決勝が控えており、ベネズエラ戦に出場したヴィッセル神戸の山口蛍や古橋亨梧が、同じく天皇杯を控えていることを理由に選考から外れたのであれば、清水の選手もE-1からは対象外となり、28日のU-22ジャマイカ戦に追加招集されるかは、天皇杯の結果次第となる。
今回はU-22が過半数を占めるメンバーであり、これまで”森保ジャパン”をキャプテンとして支えてきた吉田麻也や長友佑都、柴崎岳といったリーダー格がいない。そのため前回のE-1選手権の経験者でもある三浦弦太、9月から招集され続けている橋本拳人あたりが、チームをまとめる役割になりそうだ。
E-1選手権の予想布陣
3バックを短時間でA代表に組み込むには、U-22代表で3-4-2-1に慣れ親しんだ選手たちの働きが鍵になる。メンバー構成を見ても、U-22世代の選手の中から、E-1初戦の中国戦でスタメン出場する選手が出てもおかしくはない。
中期、長期を見据えれば、若い選手がE-1選手権を経験することがプラスになることは間違いないが、東アジアの覇権をかけた公式大会である以上、優勝を掴みに行くのは当然だ。その中でU-22の選手も含めて、森保監督に今後また招集したいと思わせる活躍を見せる選手が出てくるのか。そうした目線で取材して行きたい。
E-1選手権 予想布陣①:3-4-2-1
上田綺世
(小川航基)
鈴木武蔵 仲川輝人
(田川亨介) (森島司)
(相馬勇紀)
遠藤渓太 大島僚太 橋本拳人 室屋成
(古賀太陽) (田中碧) (井手口陽介)(追加招集)
(佐々木翔) (田中駿汰) (遠藤渓太)
佐々木翔 畠中槙之輔 三浦弦太
(古賀太陽) (田中駿汰) (渡辺剛)
(追加招集)
中村航輔
(大迫敬介)
(小島亨介)
E-1選手権 予想布陣②:4-4-2(4-2-3-1)
鈴木武蔵 上田綺世
(田川亨介) (小川航基)
(森島司) (仲川輝人)
遠藤渓太 仲川輝人
(相馬勇紀) (森島司)
大島僚太 橋本拳人
(田中碧) (井手口陽介)
(田中駿汰)
佐々木翔 畠中槙之輔 三浦弦太 室屋成
(古賀太陽) (田中駿汰) (渡辺剛) (追加招集)
中村航輔
(大迫敬介)
(小島亨介)
写真提供:getty images