U-21代表候補合宿から、U-23アジアカップのメンバー選考を考える

COLUMN河治良幸の真・代表論 第111回

U-21代表候補合宿から、U-23アジアカップのメンバー選考を考える

By 河治良幸 ・ 2022.5.17

シェアする

5月9日から11日にかけて、大岩剛監督率いるU-21日本代表が合宿を行った。目的はウズベキスタンで開催されるU-23アジアカップ(6月1日~19日)に向けた、メンバー選考の最終チェックだ。


「ここに集まっているフィールド23人+GK3人が、現段階のU-23代表だよ」


大岩監督は選手たちに、そう伝えたという。今回のメンバーは松木玖生(FC東京)のように、開幕から主力を張る選手もいれば、成岡輝瑠(清水)のように、リーグ戦でなかなか試合に絡めていない選手もいる。


3月下旬に、大岩監督体制初の海外遠征となったドバイカップU-23に参加した松木は「ドバイカップを通して、大岩監督に求められたことは明確になっている」と語り、得点に関わるプレーの大切さを学んで、FC東京に持ち帰ったという。


合宿1日目の練習は、軽いランニングメニュー組とパス&ランを使ったコンビネーションなど、やや負荷をかけたメニュー組に別れ、2日目は11対11+フリーマンでゲーム形式の練習をした後、セットプレーの確認をした。


大学選抜との練習試合


3日目は大学選抜との35分×2本のトレーニングマッチが行われた。1本目は松木やGK鈴木彩艶(浦和)など、過去に招集経験のある選手が多く、中盤の底を担った櫻井辰徳(徳島)を起点に、左ウイングの宮城天(川崎)の鋭い仕掛けや右サイドバック成瀬竣平(岡山)のクロスから、多くのチャンスを作った。


1本目は多くの時間で大学選抜を押し込んだが、最後のところがなかなか合わず、スコアレスで終えた。4-3-3のインサイドハーフで松木と組んだ染野唯月(鹿島)は、慣れない2列目のポジションからでも「もっとゴールに関わるプレーがしたかった」と反省した。


大学側に2失点を喫した2本目のメンバーは同じ4-3-3ながら、1本目より代表経験が少ない選手が多く、個々人は魅力的ながらチームとしての組織性を欠く部分があった。


大岩監督は課題が出たことを認めながら、大学選抜側にも2001年以降生まれの選手が多くおり、MF佐藤恵允やDF岡哲平(ともに明治大)のように、代表チームに絡めるタレントが見つかったことも認めている。


例えば大学選抜の1点目を決めた、元名古屋U-18のMF倍井謙(関西学院大)はドリブルの切れ味が鋭く、3人まとめて突破するシーンも見せた。静岡学園出身の井堀二昭(東海学園大)も、ボランチとして長短のパスで攻撃の起点になるだけでなく、セットプレーのキッカーとしても優れた能力をアピールしていた。


招集に向けた有力メンバー


U-23アジアカップが2年後のパリ五輪に直結するわけではないが、貴重な国際大会であることは間違いない。所属クラブの理解を得ながら、可能な限りベストメンバーを連れて行きたいところだ。


ただし、U-23アジアカップは国際Aマッチデー(5月30日~6月14日)をオーバーするため、大岩監督が希望する選手すべてを招集するのは難しいだろう。これまで未招集の大学生にもチャンスがあるかもしれない。


現時点での有力候補を整理しておくと、GKは筆頭格が鈴木彩艶(浦和)で、ポルトガルの名門ベンフィカに所属する小久保玲央ブライアンも有力だ。そこに今回の合宿で招集された野澤大志ブランドン(盛岡)や佐々木雅士(柏)が挑む。


ただし、野澤は岩手の守護神であり、大会に参加するとなると最大5試合程度、J2の試合に出られなくなるので、クラブとの交渉によっては見送られる可能性がある。


ディフェンスはA代表招集経験もある西尾隆矢(C大阪)がセンターバックの主軸で、大学選抜との試合で西尾とコンビを組んだ鈴木海音(栃木)もドバイカップU-23から継続的に呼ばれており、有力な一人だ。また、尚志高からシュトゥットガルトに加入したチェイス・アンリも招集される可能性がある。


各ポジションにタレントが揃う


サイドバックは右が成瀬と半田陸(山形)がハイレベルに競う。左はセットプレーのキッカーも担える加藤聖(長崎)がファーストチョイスと考えられるが、コンディション調整で合宿を途中離脱したため、大学選抜との試合には出なかった。


スピードのある畑大雅(湘南)やバングーナガンデ佳史扶(FC東京)がどう評価を得たか。さらにはU-19代表に招集された中野伸哉(鳥栖)も、こちら側に呼ばれてもおかしくない。


中盤は4-3-3の3ハーフを基本とした場合、今回は辞退した藤田譲瑠チマ(横浜FM)や、招集されなかった田中聡(湘南)がどうなるか。代表合宿の評価としては櫻井や松木も招集に値するが、どちらも主力なので、所属クラブとの交渉にかかってくる。


左右のウイングは佐藤や宮城に加えて、代表はU-15以来という山田楓喜(京都)もセットプレーの左足キッカーが務まることも含めて面白い存在だ。


欧州組の参加は?


ここに、参加辞退となった松村優太(鹿島)や鈴木唯人(清水)、メンバー外だった荒木遼太郎(鹿島)が加わるかどうか。前線の万能アタッカーという意味では、欧州組の斉藤光毅(ロンメル)が参加となれば、ドバイカップ U-23と同じく、10番を背負う可能性が高い。


センターフォワードは細谷真大(柏)が本命だが、今回の合宿でアピールした中島大嘉(札幌)や染野、小堀空(栃木)ほか、櫻川ソロモン(千葉)もいる。所属クラブの事情により、彼らが揃えられない場合は、大学選抜からの抜擢も考えられる。


U-23アジアカップはJリーグと日程が重なってしまうので、国際Aマッチデーに関係なく行われるJ2の主力招集は難航することが予想される。一方で、選手たちの大きな成長が期待できる大会でもあるので、どのようなメンバーになるのか、非常に興味深い。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

シェアする
河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

このコラムの他の記事

おすすめ動画