コスタリカで躍動中の”ヤングなでしこ”。U-20W杯連覇へ好発進!

COLUMN河治良幸の真・代表論 第117回

コスタリカで躍動中の”ヤングなでしこ”。U-20W杯連覇へ好発進!

By 河治良幸 ・ 2022.8.15

シェアする

コスタリカで開催中のU-20女子W杯。U-20女子日本代表”ヤングなでしこ”は、オランダに1-0、ガーナに2-0と連勝し、グループリーグ突破に大きく前進した。


前回大会はコロナ禍で中止になってしまったが、2018年のフランス大会では同じ池田太監督が率いて優勝。当時のメンバーから長野風花(ノースカロライナ・カレッジ)、宮澤ひなた(マイナビ仙台レディース)、植木理子(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)、宝田沙織(リンシェーピングFC)、遠藤純(エンジェル・シティ)、林穂之香(ダームアルスヴェンスカン)、高橋はな(三菱重工浦和レッズレディース)、南萌華(ASローマ)、宮川麻都(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)、高平美憂(マイナビ仙台レディース)が、今年7月に行われた、E-1選手権を含めた”なでしこジャパン”に招集されており、チームのベースとなっている。


今回のヤングなでしこにも、将来的になでしこジャパンの主軸になりうるタレントは多くいるが、2018年大会と意味合いが違うのは、両チームを兼任で率いる池田太監督が、来年の夏に行われる女子W杯の戦力を発掘しようとしていることだ。


「アンダーカテゴリーの戦いの中で、日本は色々な国にマークされていると思っています。ただ我々は国際親善試合を多くやっていない分、情報も少ないので、他のチームが我々をどう見てどう準備してくるか。そしてそういった相手に我々もどう戦うかという展開になると思います」


池田監督は、U-20W杯開幕前にそう語っていた。日本はこの年代のディフェンディングチャンピオンであり、ライバル国は”ストップ・ジャパン”で来る。またアンダーカテゴリーの場合、情報が少ない中で、特長の違う相手にアジャストしていく能力が個人にもチームにも求められる。


U-20W杯開幕後2連勝


ここまで、U-20W杯のグループリーグでオランダ、ガーナと戦ってきて興味深かったのが、日本も相手に慣れていないが、相手も日本に慣れていないということだ。


オランダは日本のハイプレスと積極的にライン間を狙う攻撃に苦戦していた。その1つがFW浜野まいか(INAC神戸レオネッサ)のスルーパスにFW山本柚月(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)が抜け出してのゴールにつながった。


山本も「前半は相手もアンカーを使って繋いでくるサッカーをしてきた中で、自分たちの前線からのプレスが上手くはまって守備ができていました」と語っている。


しかし、後半になると日本がオランダに慣れ、オランダが日本に慣れたことで、多少オープンな展開の中で、引き締まったゲームになった。


オランダがボールを握ってサイドから攻撃を仕掛けるシーンも増えたが、GK福田史織(三菱重工浦和レッズレディース)の好セーブもあり、1-0で勝ちきることができた。


コンセプトはなでしこジャパンと同じ


2戦目のガーナ戦はスタッツだけ見ると、ボール保持率、シュート数ともに日本が大きく上回ったが、ガーナのスピードや身体能力に苦しみ、ロングボールがワンバウンドしたところの入れ替わりや、サイドのスペースにボールを運ばれたところからの危ないシーンもあった。


日本はハンドとファウルで得た2つのPKをものにし、勝利に持ち込んだが、スリリングな展開だった。その中で試合が進むに連れ、互いが特徴を掴んでいくのが見て取れた。


池田監督率いるヤングなでしこのコンセプト、「ボールを奪う、ゴールを奪う」は、なでしこジャパンと変わらない。守備では組織的にプレッシングをかけて、ハイラインの裏はGKがカバーする。攻撃も従来の日本に比べると縦に走り、縦にパスを差していく意識の高さが目に付く。


ヤングなでしこの攻撃の中心を担うのが、浜野まいか。背番号は11だが、いわゆる10番タイプの動きで、幅広くチャンスメイクからフィニッシュに関わる。18歳でまだ線は細いが、ボールを持ったらほとんど奪われないので、周りの選手も信じて効果的な動き出しができるのが1つのカラーになっている。


ボランチはボール奪取能力と攻撃の起点になれる能力を併せ持つMF天野紗(INAC神戸レオネッサ)と、2004年生まれのMF大山愛笑(日テレ・東京ヴェルディメニーナ)のコンビ。


天野が160cm、大山が158cmとサイズはないが、タイトにスペースを埋め、相手に厳しく寄せることができるので、中央をシンプルに突破されるシーンは少ない。配球も正確で、ボールロストの少なさもチームの安定につながっている。


攻守にタレントが揃う


10番を背負う藤野あおば(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)は、スピードに乗って仕掛ける姿勢を押し出していくタイプ。攻撃が勢いに乗ると藤野がどんどん前に出ていくので、3トップに見えることもある。


ディフェンスの中心は172cmの石川璃音(三菱重工浦和レッズレディース)。統率力に加え、ゴール前の粘り強い対人守備が目立っている。オランダ線もガーナ戦もサイドを破られるシーンは何度もあったが、無失点に抑えたのは彼女の存在が大きい。


浦和からは熊谷紗希(バイエルン・ミュンヘン)や南萌華など、なでしこジャパンの守備を支えるタレントが出ており、その系譜を継ぐ選手としても注目だ。


注目のアメリカ戦


ヤングなでしこは、日本時間18日(午前8時キックオフ)のアメリカ戦で、引き分け以上でグループリーグ突破が決まる。ヤングなでしこらしく、守備も攻撃もアグレッシブにトライして行くことが大事だろう。


準々決勝に進めば、日本はC組の1位 or 2位と対戦することになる。


韓国、ナイジェリア 、フランス、カナダと強豪がひしめく組で、ナイジェリアがフランス、韓国に連勝して首位を走っている。


カナダは直前に日本とトレーニングマッチを行っており、知った相手になるが、どこが相手になるにしてもコレクティブな戦いをしながら、局面のデュエルなどで負けないことが求められる。


まずは大会連覇を目指してチーム一丸となって戦ってもらいたいが、その中で池田監督に「A代表で試してみたい」あるいは「来年のW杯に連れていきたい」と思わせるタレントが台頭するかどうか。コスタリカから日本に、元気を届ける戦いを期待している。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

シェアする
河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

このコラムの他の記事

おすすめ動画