FIFAワールドカップに向けたメンバーが決定。各ポジションの序列と戦い方を読み解く

COLUMN河治良幸の真・代表論 第123回

FIFAワールドカップに向けたメンバーが決定。各ポジションの序列と戦い方を読み解く

By 河治良幸 ・ 2022.11.6

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日本代表の森保一監督は多くの参加国に先立ち、FIFA ワールドカップメンバーを発表した。コロナ禍もあり、従来の23人から3人増えたが、それによって選考が簡単になることは無かったという。


前回大会後も日本代表を引っ張り、支えてきたFW大迫勇也(ヴィッセル神戸)やMF原口元気(ウニオン・ベルリン)が外れ、旗手怜央や古橋亨梧(ともにセルティック)などの注目選手が外れたことで、賛否両論が起きている。


一方で9月に負傷した板倉滉(ボルシア・メンヒェングラートバッハ)や浅野拓磨(ボーフム)が招集されており、回復具合を不安視する声もある。


日本代表はオールスターチームではなく、大会に勝つために、監督がベストと考えるメンバーを選ぶものだ。森保監督やスタッフがシミュレートし、必要な選手を割り出す。さらに過密日程での疲労やアクシデントのリスクを想定しながら、全体を編成して行くものだろう。


中山雄太の負傷


森保監督がどういったプランで、誰をスタメンで起用し、途中投入するかは不明だが、おおよその戦い方は考察できる。


残念なのはDF中山雄太(ハダーズフィールド)が、アキレス腱を負傷し、手術が不可避であるため、カタール行きを辞退するしかないこと。冨安健洋(アーセナル)もふくらはぎの怪我が再発したと伝えられているが、こちらは全治などが定かではないため、辞退はしない想定で考えたい。


これまでの戦いから、4-2-3-1と4-1-4-1がベースとなるが、ひとつのポジションに3人は割り当てられるように構成しているはずだ。


右サイドバックは酒井宏樹(浦和レッズ)と山根視来(川崎フロンターレ)に加えて、冨安もアメリカ戦の途中から、所属クラブと同じ右サイドバックでテストされた。さらに左サイドバックの長友佑都(FC東京)を、右サイドに回すことも可能だ。


センターバックは冨安とキャプテンの吉田麻也(シャルケ)。さらに板倉と谷口彰悟(川崎フロンターレ)の4人に、左サイドバックとの兼務で伊藤洋輝(シュトゥットガルト)も起用の目処が立っている。中山雄太もプレー可能だったが、追加招集の選手で埋めていくのか、気になるポイントだ。

左サイド起用の目処が立った久保


中盤は4-2-3-1なら2ボランチ、4-1-4-1だと中盤の3枚で起用する選手によって、攻守のバランスや狙いに違いが出る。


ボランチは遠藤航(シュトゥットガルト)と守田英正(スポルティングCP)がファーストセットと想定され、田中碧(フォルトゥナ・デュッセルドルフ)と柴崎岳(レガネス)という4人が基本だが、センターバックの板倉と谷口も2ボランチ、1ボランチで対応できる。


そこに関しても中山がバックアップできるはずだったが、追加招集される選手によって変わってくるかもしれない。


4-1-4-1であれば、中盤のインサイドハーフに鎌田大地(フランクフルト)や久保建英(レアル・ソシエダ)に加え、南野拓実(モナコ)も攻撃的なオプションとして候補に入ってくる。


彼らは4-2-3-1で2列目の中央を任せられる選手だが、アメリカ戦では久保が左サイドで起用され、攻撃だけでなく守備面でもクオリティの高いプレーでアピールした。初戦のドイツ戦で9月の2試合と同じく4-2-3-1を使うなら、左サイドのファーストチョイスになるはずだ。


攻撃の中心は鎌田


右サイドハーフはアジア最終予選でも大活躍した伊東純也(スタッド・ランス)が第一人者で、左利きの堂安律(フライブルク)もスタメンを任せうる選手。攻撃的では、最も計算が立つポジションと言える。


いかなるシステムでも、攻撃の中心を担うのは鎌田大地だ。チャンピオンズリーグで所属チームが決勝ラウンド進出を果たす立役者となったMFが、ドイツやスペインを破るキーマンになることは間違いない。


つまり4-2-3-1の場合は、2列目に伊東、鎌田、久保が並ぶ形になる。左サイドは久保で行けるところまで行き、勝負の時間帯に突破力のある三笘薫(ブライトン)を投入するのが想定できるプランだ。


26人のメンバーでサプライズとされる相馬勇紀(名古屋グランパス)は、久保と三笘に続く左の3番手だが、久保がインサイドも兼ねていることから、2試合目のコスタリカ戦に久保がトップ下あるいはインサイドハーフで先発する場合、左でスタメン起用される可能性もある。


三笘はスーパーサブ起用か


三笘自身はスタメン奪取に意欲的だが、彼の能力を生かすなら、グループステージの3試合は全て途中投入というプランもあり得る。


攻守にパワフルな相馬はスタメンでも途中からでも仕事ができるが、東京五輪のように、相馬が先に出れば後から三笘、三笘が先なら後から相馬と、タイプの違うドリブラーが出てくると、相手はやりにくい。五輪代表も率いた森保監督のプランにはあるだろう。


相馬は右サイドでも縦の推進力を出せるので、伊東、堂安に続く右の三番手としても計算されているかもしれない。


現状、読めないのは南野拓実だ。ゴール前で決定力を発揮できるが、典型的なFWではなく、サイドで突破力を生かすタイプでもない。


周囲との連携が生命線になるが、トップ下は鎌田、左は久保と三笘、さらに相馬も本職として加わったことで、4-2-3-1での居場所が見出しにくくなった。


ただし、1トップに上田綺世(セルクル・ブルージュ)がいると、スペースを生かしてフィニッシュに絡む動きを狙いやすい。得点という部分で期待の大きい選手だけに、うまく生かして結果に繋げたいところだ。


1トップは日替わりか


1トップは、前回大会の大迫のような絶対的な存在がおらず、試合ごとにスタメンが代わる可能性がある。


ハイプレスが鍵になるドイツ戦は前田大然(セルティック)。堅守速攻のコスタリカとの試合では、押し込む展開を想定して上田。自陣で守備を固める時間が長くなりそうなスペイン戦は、距離の長いカウンターを得意とする浅野といった、選手の特長をフルに生かすプランだ。


GKは相手のプレスを剥がすビルドアップやハイボールの対応が生命線になるため、9月の2試合で猛アピールしたシュミット・ダニエル(シント=トロイデン)が一番手と考える。


ただしアジア予選を含む、多くの試合でゴールを守ってきた権田修一(清水エスパルス)の安定感も軽視できない。もちろん、過去3大会で正GKだった川島永嗣(ストラスブール)も心身両面で頼りになる。


試合ごとにGKを変えるのはレアケースなので、17日のカナダ戦も含めた直前の合宿で、見極めて行くことになるだろう。


目標はベスト8以上


森保監督や代表スタッフは大会での試合をシミュレートして、26人のメンバーを選んだと見られるが、初戦のドイツ戦で勝つのか、負けるのか、引き分けるのかによって状況は変わり、出場メンバーの疲労も、通常では考えられない負荷がかかる可能性もある。


日本代表の目標はベスト8以上なので、ラウンド16をフルに戦う体力も考えないといけないが、下馬表ではドイツとスペインが圧倒的に有利とされ、2014年のブラジルワールドカップでベスト8に躍進したコスタリカも侮れない中で、ギリギリの戦いになることは間違いない。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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