故障者続出のボランチに対し、好調な選手を揃えるアタッカー陣。カナダ戦のチェックポイントは?

COLUMN河治良幸の真・代表論 第125回

故障者続出のボランチに対し、好調な選手を揃えるアタッカー陣。カナダ戦のチェックポイントは?

By 河治良幸 ・ 2022.11.16

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FIFA ワールドカップを目前に控えた”森保ジャパン”は、17日にUAEでカナダと対戦する。試合である以上、勝利が求められるのはもちろんだが、45分×2本という限られた時間でどういったことを確認すべきだろうか?


北中米カリブ海予選でメキシコやアメリカ、コスタリカを上回り、首位突破したカナダは3-4-1-2が基本システム。2015年のFIFA女子ワールドカップで、カナダをベスト8に導いたジョン・ハードマン監督が率いており、男女でFIFAワールドカップ出場チームを率いる、史上初の指導者だ。


エースのアルフォンソ・デイヴィスはバイエルン・ミュンヘンで快速の左サイドバックとしてブレイクしたが、元々アタッカーで、代表チームではトップ下から攻撃を操っている。


そのデイヴィスを筆頭に、フィールド選手のほぼ全員が俊足で、運動量も豊富なことが強みだ。ウイングバックのサム・アデクグベ(ハタイスポル)やリッチー・ラリア(トロント)も激しいアップダウンで攻守に関わる選手。スペース管理がうまく、セカンドボールからの二次攻撃は厄介だ。


遠藤、守田不在で挑む


強度という意味では、本番前の試合としては格好の相手だが、グループステージで戦うドイツ、コスタリカ、スペインとの戦術的な共通点はあまりない。日本としては自分たちに矢印を向け、選手のコンディションや組み合わせ、連携などを確認するゲームになる。


ただし、ここに来て不安要素が出てきている。そもそもメンバー発表の時点で、怪我明けの選手が多く含まれていることに対し、懸念の声は出ていた。


9月に膝を負傷した板倉滉(ボルシアMG)と浅野拓磨(ボーフム)は、本番に間に合うと見込まれていたようで、二人とも順調に回復している様子だが、冨安健洋(アーセナル)が右膝の負傷で別メニューとなっており、すでに中山雄太(ハダーズフィールド)がアキレス腱の負傷で辞退。代わりにFWの町野修斗(湘南ベルマーレ)が追加招集された。


26人の中で攻撃のオプションが増えることはプラスだが、中断前のリーグ戦で遠藤航(シュトゥットガルト)が頭部を負傷。脳震盪の疑いで検査となった。


結局、代表チーム合流の許可は出たが、復帰プロトコルに従って別メニュー調整しており、カタールに居残りとなっている。また、ボランチの主力として定着している守田英正(スポルティングCP)も、左ふくらはぎの違和感で大事をとり、カタールに残ることになった。


田中、柴崎のダブルボランチか


怪我明けの田中碧(フォルトゥナ・デュッセルドルフ)は「もう問題ありません」と明るい表情で語るが、感覚的なところに不安はある。それでも柴崎岳(レガネス)とともに、現時点で稼働できる本職ボランチとして、カナダ戦でスタートから出る可能性は高い。


とはいえ、ここで無理して90分プレーするのは良策とは言えない。仮に柴崎&田中のボランチを1本目の45分で使う場合、2本目は板倉をアンカーにした4-1-4-1などをテストするのも有効だろう。


有事だけに、可能性としては谷口彰悟(川崎フロンターレ)や伊藤洋輝(シュトゥットガルト)のボランチ起用も選択肢になるが、この段階で前向きなプランではない、緊急性の高いオプションをテストするのは、森保一監督も本意ではないだろう。


さすがに本大会前、最後のテストマッチで、中盤の軸である遠藤と守田が揃っていない事態は筆者も想定外で、原口元気(ウニオン・ベルリン)か旗手怜央(セルティック)を選んでおけばという声が出るのは無理もないことだ。


しかし、大事なのは起きてしまったことに対して、森保監督がどう対処して、持ちうる最良のプランをチョイスしていくかである。


カナダ戦を乗り切れたとしても、ドイツ戦をはじめとする、本大会に向けたプラス材料を得られないことには意味がない。もちろんトライした結果のエラーや課題もそこに含まれるが、後ろ向きの対処で終わってしまうなら、直前のテストマッチの意味が限定されてしまう。


現時点ではあまり考えたくはないが、本大会で良い状態に戻る見込みが無ければ、バックアップとのメンバーチェンジも想定はしているはず。カナダ戦はその見極めの意味もあるかもしれない。


好調な二列目の選手たち


ここからは、前向きな話をしたい。ボランチの不安とは裏腹に、二列目の選手たちは全体的に調子を上げている。


なかでも、フランクフルトでチャンピオンズリーグの決勝トーナメント進出を果たした鎌田大地は、特筆に値する。


準備期間の短さについても「ワードカップが初めてなんで比較はできないですけど、準備期間が長すぎても、僕はあまり好きじゃないので。今いい状態で来れていると思うし、すぐ試合があるのは、僕としては悪いことではない」と語る。


右サイドの主力である伊東純也も「これまで1つ1つやってきて、あっという間でしたけど、最後まで生き残れてよかった。ここがスタートラインだと思って、しっかりやりたい」と浮き足立つ様子もない。鎌田と伊東に関しては、日本代表のストロングになる期待が高い。


活躍が期待される久保


久保建英(レアル・ソシエダ)も、初のFIFAワールドカップで、チームを勝利に導く活躍に期待がかかる。


「ラ・リーガで3位のチームで、レギュラーで試合に出ている選手が代表に選ばれないってことはない」と語るように、メンバーに選ばれるかではなく、いかに持ち味を発揮して、活躍を見せられるかに意識を向けている。


「僕なんかはテンションを上げ過ぎてもあれなので、徐々に本番に向けてテンションを上げていけたらいいかなと思っています。長友選手みたいに、常時100%でやれるタイプではないので。100%でやらないとダメですけど、テンションの部分は徐々に上げていければいい」


久保に負けず劣らず、静かに闘志を燃やしているのが堂安律(フライブルク)だ。


新天地で「90分間通して、強度を高いまま保てるようになったと思います」と成長を実感。コンディションも良好なようだが、メンタル面に関しては「夢の舞台なので、そんなに考えなくても、勝手にマインドは変わると思います」と語る。


森保監督の起用法は?


E-1選手権と9月の代表活動でのアピールが実り、メンバーに入った相馬勇紀(名古屋グランパス)や「コンディションとしては、すごく調子が上がってきている」と強調する南野拓実(モナコ)などが、アタッカー陣の中で存在感を出していけるか。


三笘薫(ブライトン)が体調不良で合流できていないのは気掛かりだが、もしドイツ戦を逃したとしても、コスタリカ戦とスペイン戦で勝ち点3を狙う強力な武器になってくれたら、大きな助けになる。


カナダ戦の見どころに関して、極論を言えばすべてのポジションがチェックポイントになる。その中で、不安要素のボランチと日本のストロングである二列目の陣容をどう見極めて、メンバーを組んでいくか。森保監督の起用法と試合でのエビデンスに注目したい。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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