パリ五輪を狙う大学屈指のGK法政大・近藤壱成。成長に繋がった強力なライバルたちとの守護神争い「彼らの存在がなければ…」

パリ五輪を狙う大学屈指のGK法政大・近藤壱成。成長に繋がった強力なライバルたちとの守護神争い「彼らの存在がなければ…」

2022.5.17 ・ 海外サッカー

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 法政大は5月14日、関東大学サッカーリーグ第6節の拓殖大戦で0−4の敗戦を喫した。


 先発出場した189センチの大型GK近藤壱成(4年)は、屈辱の4失点。近藤はその試合の直後でも、気丈に取材に応じてくれた。


「周りのチームはどんどん試合をしているのに、(新型コロナの影響で)練習すらできない時期もありました。そこに対する焦りはあったのですが、チームの中で話し合う時間、考える時間が増えたとポジティブに捉えるようにしていました。


 今季僕らが掲げている『5冠』(天皇杯予選、アミノバイタルカップ、総理大臣杯、関東大学サッカーリーグ、インカレ)という目標は、全員が一丸となって本気で目指さないと到底到達することができないことだと、全員で改めて理解することに努めましたが、それを今日は示せなかった」


 実は法政大にとって、この試合が今季の開幕戦だった。3月28日、サッカー部内に新型コロナウィルス感染者が確認されて活動停止に陥ると、再開予定だった4月18日に再び陽性者が出て、4月27日まで活動停止となった。


  これによって、天皇杯東京都予選初戦の拓殖大戦を棄権し、戦わずして5冠のうちの1冠が消えてしまった。さらにリーグ戦も開幕戦を含めた5節までが延期となり、ほかの大学が天皇杯予選やリーグ戦を戦うなかで、法政大だけなかなか開幕できない日々が続いた。


 そのなかで近藤は、全日本大学選抜に選ばれ、5月11日のU-21日本代表戦の2本目に出場したうえでこの試合に臨んでいた。


「全日本では大きな気づきもあった。この経験をチームに還元しようと思った」が、拓殖大戦で前半に先制点を許した法政大は、直後に獲得したPKを決め切れず。42分にはCBの選手が退場となるなど、苦しい状況となった。後半、10人で反撃を試みたが、拓殖大の猛攻を前に3失点をし、今季の初陣で大敗を喫してしまった。


 苦しい出だしとなったが、前記したコメントからも分かる通り、近藤の目はまっすぐ前に向けられていた。大学4年生になった今年は、本人にとっても勝負の1年だ。

  そんな近藤は、磐田U-18から法政大にやってきた。高校、大学と常に強烈なライバルたちとともにサッカー人生を歩んできた。


 高校時代は1学年下に、昨年、U-22日本代表としてU-23アジアカップ予選に出場をしたGK杉本光希(立正大)がいた。磐田U-18で高3の春までは近藤がレギュラーだったが、途中から杉本に守護神の座を明け渡し、最後まで奪い返すことはできなかった。


 大学に進学をすると、1年次には中野小次郎(札幌)らが立ちはだかった。2年次の序盤こそレギュラーの座を掴み取ったが、終盤は中野に定位置を奪い返される形となった。


 さらに1学年下のGK中川真が成長し、法政大の守護神争いはまさに『三つ巴』の状態になった。そして昨年も前期はレギュラーとして出場をするも、後期は中川にスタメンを譲る試合も増え、なかなか定着できない日々が続いた。


 そして今年、全日本大学選抜に選ばれるも、第1GKは、青森山田高時代に全国制覇を成し遂げている同い年の飯田雅浩(国士舘大)だった。

  法政大では昨年、U-20日本代表候補にも選ばれた中川が虎視淡々とレギュラーの座を狙っており、激しいポジション争いは現在も継続中だ。また、プロを目指すなかで古巣磐田への復帰を考えるのであれば、同じく磐田U-18出身で1学年下の杉本の存在もライバルになる。


 さらに近藤は、2001年1月15日生まれ。パリ五輪を目指すU-21日本代表の世代であり、そうなると小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)、鈴木彩艶(浦和)、野澤大志ブランドン(岩手)などハイレベルな選手たちがライバルとなる。


 どこにいっても不動の存在となれないもどかしさはある。だが、その環境こそ自分を成長させてくれた1番の要因だと近藤ははっきり言い切った。


「彼らの存在がなければ、僕はこの位置まで来れていないし、全日本大学選抜にも選ばれていなかったと思う。もちろん競争相手が、どこに行ってもたくさんいたことで、苦しい時間はたくさんあったけど、それ以上に自分がどうやったら試合に出られるのか、成長できるのかを真剣に考える時間が多くあった。それこそが僕が大学で一番伸びた最大の要素だと思っています」


 その言葉通り、苦しい思いや、思い通りにいかない現実に何度も直面しながらも、ライバルを認め、自分の成長を突き詰めてきたからこそ、彼は常に競争の場に立てていると言っていい。

  全日本学生選抜のライバルである飯田は、「壱成は自分より高さもあるし、シュートストップと1対1は本当にピカイチでリスペクトをしています。負けられない存在です」と語る。近藤の存在もまた、ほかの選手たちにとっては強力なライバルなのだ。


「GKという1つしかないポジションにおいて、コロコロ変わっているような選手が周りから信頼されるのか、評価されるのかと言われたら、そうではないと思う。なのでそういう意味では、今年は試合に出続けないといけないと思っています。これが今年の僕の課題であり、自分にとっての伸びしろだと思っています」(近藤)

  ほかならぬ自分自身が、自らに大きな期待を寄せている。ライバルたちとの切磋琢磨のなかで際立つ存在になるため、プロへの道、パリ五輪への道を切り開くために、近藤はどんな壁も覚悟のうえで力強く歩みを続けていく。


取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)



 

記事提供:サッカーダイジェストWEB

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