スポーツ分析の最新事情!分析アプリ×AIカメラによる「映像分析」がスポーツに与える恩恵とは?

スポーツ分析の最新事情!分析アプリ×AIカメラによる「映像分析」がスポーツに与える恩恵とは?

2022.7.22 ・ 海外サッカー

シェアする

 プロクラブ、代表チームといったトップの現場だけでなく、今や育成年代でも「映像分析」は一般化している。


 試合や練習を撮影して映像を観ながら個人、チームの課題確認や対戦相手の分析を行なうなど分析するテーマや映像の使い方も多種多様だ。


 では実際に「映像分析」を活用する影響について株式会社SPLYZA、株式会社NTTSportictの担当者に話を訊いた。


ー◆ー◆ー◆ー◆


『SPLYZA Teams』は高校サッカーだけで約220チームに利用される分析ツールだ。チームのレベルはそれぞれで、中京大中京高などのインターハイ常連校もあれば、県大会出場を目標とするような一般的なレベルの高校もある。

   

 レベルを問わず、全国的に映像分析が広まっている背景を株式会社SPLYZAの外山達哉氏は「映像を観て振り返る文化が浸透してきているのだと思います」と話す。


「要因のひとつは撮影機材が充実し、手軽になったことです。専用の機材でなくても、スマホで撮影できることで撮影自体が身近になり、画質も上がっています。そういう時代のなかで、映像を活用する文化が広がっているのだと思います」


■選手一人ひとりが課題を発見して解決する力に


『SPLYZA Teams』の特徴は、大きく分けてふたつある。


 ひとつは自分たちが観たいシーンを簡単に振り返ること。

「タグという機能があるのですが、これは簡単に言うと、映像に付箋を貼るようなイメージです。例えばペナルティエリア内のシーンだけにタグを貼れば、その部分だけを簡単に見返すことができるのです」


 もうひとつの機能は、自身の意見や考えをアウトプットできること。

「監督から言われたことだけではなく、自分たちの考えを発信することが重要です。今日の試合でどこが良くて、どこが悪かったのか。試合の映像を振り返りながら、自分の意見を映像の中に描き込み、それをチーム全体で共有することができます」


 描き込みを行なう、共有するデバイスを問わないのも特徴で、OSの違うスマホやパソコン、タブレットと異なるデバイスでも共有できるのも大きな利点となっている。また『SPLYZA Teams』による映像分析は、決してチームの強化だけが目的ではない。


 このツールを活用するメリットを、外山氏は次のように説明する。

「『スポーツは考える力を育む。』というコンセプトのもとに『SPLYZA Teams』はあります。分析と言うと高度な印象を受けますが、決してそうではありません。問題に対して、振り返って課題を見つけることは、スポーツに限らず社会に出てからも役立つもの。自分で課題を発見し、何を改善しなければいけないのかを考え、練習に生かしてそれを実現していく。そのサイクルを身に付けられることが、『SPLYZA Teams』の一番のメリットだと思っています」 多くの学校から支持される『SPLYZA Teams』だが、一方で活用する上での課題もあった。それは撮影に関する問題だ。


 手軽に撮影できるようになったとはいえ、試合や練習を撮影する人員を確保しなければいけないし、画質は上がっていても撮影者の技術によって映像自体の質は変わってしまう。『SPLYZA Teams』にとって質の良い映像を用意できるかがテーマとなっていた。


 特にサッカーにおいては撮影に関しての相談を数多く受けたと言う。その質問があまりにも多かったため、自社のオウンドメディアに撮影の仕方や機材の選び方などの記事を掲載するほどだった。


「試合の撮影は、撮影者だけではなく、補助者も含めると3~4人くらい必要。さらに映像の質も重要なのですが、撮影者が緒になって喜んで、肝心のシーンが撮れていないこともよくあります(笑)。振り返って分析するためには映像の質はすごく大事ですから、それをいかに提供、サポートできるかが弊社の大きなテーマでした」


 しかし今年4月、課題解消に向けて大きく前進することになる。AIカメラを活用した『STADIUM TUBE』を提供する株式会社NTTSportictとの提携で新たなサービスをスタートさせることになった。

 


■持ち運べるAIカメラの導入で環境を問わず撮影が可能に!


 スポーツの自動撮影を実現するAIカメラ「Pixellot」を用い、容易に撮影・編集・映像配信ができるサービスだ。これまでは固定型のAIカメラのみだったため自治体の体育館・球技場などに設置することが主な製品だったが、昨年7月に軽量で低コストの可搬型をリリース。チームはもちろん、個人ユーザーでの利用も可能となった。


『STADIUM TUBE』の特徴をNTTSportictの秦光史郎氏は、次のように説明する。

「設置さえすれば簡単に撮影ができ、AIがコートを認識し、それぞれのレンズで同時に

撮影していきます。プレーの詳細を確認したい場合は、ボールのあるところの映像を観ることができますし、ボールのない所の動きを見たければ、パノラマ映像で確認できます。2種類の映像を一度に作れるのが、このAIカメラの特徴です」


 カメラに搭載されたふたつのレンズで撮影した映像からクラウド上で「パノラマ映像」と競技のルール、コートサイズ、人やボールの動きなどから「プレー局面の映像」の2つの映像を生成。最長約4・4メートルの三脚が備わっており、平地でも高い位置からピッチ全体を俯瞰で撮影できる。


 撮影時も専用アプリから画角のチェックができ、画角内にコートが収まっていれば、撮影開始から停止まで一切の操作が不要。約14時間のレコーディングが可能でバッテリーも約6時間持ち、電源のない屋外でも長時間の撮影や雨天にも対応していることも大きな利点だろう。電源があり、雨天でなければ、充電しながらの撮影も可能だ。


「撮った映像は、通常であればダウンロードして動画共有プラットフォームにアップするのが一般的ですが、今回の連係では映像がクラウドに自動でアップされ、『SPLYZATeams』に落とし込めるので、その手間がかからないのも大きな特徴になります」と分析作業に取り掛かるまでの手間までも大きく軽減された。

  4月に連係したばかりのこのサービスだが、リリース直後から多くの学校から問い合わせがあり、すでに全国大会の常連校で導入されている。


 現場でカメラの設営に同席した秦氏は「すでに『SPLYZA Teams』をご利用していた学校では、やはり撮影やアップロードの手間に悩みを持たれていました。そこで先日、『STADIUM TUBE』を実際に使っていただいたところ、こんなに簡単でいいのかという感想を頂けました(笑)。設営も5分程度でできますし、人員を割かずに録画ボタンを押すだけで撮影できるため、『撮影が楽でいい』と、高く評価してもらえました」


 撮影に課題を抱えていた『SPLYZATeams』、と、チーム単位への提供を推し進めていた『STADIUM TUBE』。両社の思惑が合致し、いわば最強の映像分析ツールが誕生したのである。


 より良いサービス提供に向け、両社はすでにアップデートも視野に入れている。


 SPLYZAの外山氏は、「現状のアウトプットのやり方だと、どうしても一方通行になりがち」と、『SPLYZA Teams』の描き込み機能の問題点を指摘。「映像を介して選手、スタッフが双方向でやり取りできるコミュニケーション機能を今夏にも搭載予定です。映像内で簡易的なミーティングもでき、選手の気づきに対して監督がアドバイスを描き込めるなどチームで使うサッカーノートのような使い方も可能になります」


 また、テスト段階でユーザーから要望が多かった匿名性、共有相手を限定する機能を導入し、学年、ポジションや立場を気にせず純粋な議論をしてもらうことが目的だ。


 一方で『STADIUM TUBE』の課題はスピード感だと言う。


「現状はアーカイブ専用のカメラなので、より早く、ライブ配信に近い形で撮影映像を観られるようなサービスを開発中です。早ければ今年中には提供できると思っています」と秦氏。


 映像処理のスピード感が高まれば、試合直後のミーティングで映像を活用することも可能になるという。■スポーツの価値や役割をより高く価値のあるものに


 最後に両社に今後の目標を伺った。


「NTTSportictとして掲げているのは、『あなたの頑張る姿をあなたの誰かに届ける』というもの。コロナ禍の影響もあり、保護者の方が直接応援することが難しい状況にありますが、映像ならより多くの方々に『頑張る姿』を見せることができます。映像を撮る・観ることが一般化され、その先に今回のように分析にも使われれば、より浸透していくと思います。スポーツを気軽に撮って、観られる。それが当たり前となるような文化を定着させていきたいですね」(秦氏)


「僕たちは『スポーツは考える力を育む。』というテーマを掲げています。なぜなら、スポーツは正解のない問題だから。一番は、その価値観を広げていきたいですね。考える力を育み、正解のない問題に取り組むことは、この先の人生でもすごく価値のあることだと思います。『スポーツをすること=正解のない問題を考えている』という価値観が広まれば、スポーツの価値も向上するはずです。いまサッカーを頑張っている選手たちは、すでに正解のない問題に取り組んでいるのだと知ってほしいです」(外山氏)


 その手法は異なるものの、両社の想いは同じだ。映像分析はただのツールではなく、選手、その家族、スポーツに関わる人々の人生をより豊かに成長させるきっかけとな

る時代を迎えている。



取材・文:原山裕平

写真提供:株式会社SPLYZA、株式会社NTTSportict

記事提供:サッカーダイジェストWEB

シェアする

最新記事

おすすめ動画