「数分間の会話で理解できた」なぜレバンドフスキはバルサに移籍したのか。早速もたらしている効果とは――【現地発】

「数分間の会話で理解できた」なぜレバンドフスキはバルサに移籍したのか。早速もたらしている効果とは――【現地発】

2022.8.13 ・ 海外サッカー

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 ある日、ロベルト・レバンドフスキは電話に出た。「バルセロナを牽引したい気持ちがあるか聞かせてほしい」。声の主はシャビだった。前線の補強を巡って、バルサの指揮官は他の選択肢を排除し、ジョアン・ラポルタ会長が提案したレバンドフスキで一本化していた。


 獲得に動いている選手に電話で直接ラブコールを送ることを習慣にしているシャビは、もちろんレバンドフスキも例外ではなかった。


「数分間の会話で、僕に何を求めているのか明確に理解できた。システムにおいても戦術においても、だ。彼は自分が何をしたいか、どのように実現すればいいか知っている。適任者だ。縁を感じたよ」。5万9026人のファンがカンプ・ノウに集結したプレゼンテーションの後、行われた記者会見でレバンドフスキはこう声を弾ませた。


 バルサにとっては喜ばしい日だった。特に上機嫌だったのがラポルタ会長で、イムノ(応援歌)のリズムに合わせて「バルサ、バルサ、バルサ!」と叫びながら、レバンドフスキの手を上にあげて喜びを全身で表した。その視線の先にいたのが、レバンドフスキの代理人のピニ・ザハビで、「ピニに電話をかけて、ロベルトがバルサに来る可能性があるかどうか聞いたんだ」と舞台裏を明かした。


 レバンドフスキの思いも同じだった。昨シーズンが終了する前に、バイエルンを退団する時機が訪れたことを悟っていた。契約延長オファーは、ついに手元に届くことはなかった。また彼は長期契約を希望していたが、バイエルンには30歳以上の契約延長は1年毎というポリシーがある。


 例えば、マヌエル・ノイアー(36歳)が5月に23年に満了を迎える契約を1年間延長した。トーマス・ミュラー(32歳)も同様だ。その一方で、6月に加入したサディオ・マネ(30歳)の契約期間は25年までの3年間だ。


「ロベルトは家族のことも考えなければならなかった。子供もいて、安定を求めていた。バイエルンは彼にそれを与えなかった」と情報筋は明かす。おまけにユリアン・ナーゲルスマン監督から自らの仕事ぶりを疑問視されるに至り、移籍に傾く結果となった。 ラポルタにとっては完璧な状況だった。そこに「仕事以外での付き合いもある」というピニ・ザハビとの親密な関係が、シャビが必要としていたワールドクラスの9番の獲得の大きな決め手になった。


 クラブ内でも「レオ(リオネル・メッシ)が去った後、我々は対外的に顔になれる選手を必要としていた」と加入を大歓迎だ。その期待の大きさを物語るように、レバンドフスキはメンフィス・デパイが背負っていた9番を着用する。この措置について「クラブの方針」とラポルタは語るにとどまった。

  チーム関係者のひとりは加入効果についてこう指摘する。「とにかくよく練習する。彼が持つ厳しさがチームにいい緊張感をもたらしている。実際、昨シーズンに比べて、練習の強度は増している」


 一方、当のレバンドフスキは、「常にチームのパフォーマンスを意識している。いいプレーを見せることでチームの力になるだけでなく、いろいろな経験を還元していきたい」と抱負を述べた。


 メッシがいなくなった今、ラポルタはレバンドフスキにピッチ上における権力を手渡し、自らの権力維持を図ろうとしている。あとはボールがゴールネットを揺らすかどうか。もちろんそれはレバンドフスキひとりの力だけでやり遂げることではできない。


文●ファン・I・イリゴジェン(エル・パイス紙バルサ番記者)

翻訳●下村正幸


※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙のコラム・記事・インタビューを翻訳配信しています。

記事提供:サッカーダイジェストWEB

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