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FIFA ワールドカップ カタール 2022の開幕戦、カタール対エクアドルは、2-0でエクアドルが勝利した。
「恐ろしいスタートを切り、相手に試合を決定付けられてしまった。何が起きたのかを分析し、次の試合でトップパフォーマンスを出すことに集中しなければならない」と、カタールのフェリックス・サンチェス監督は試合後に振り返る。
立ち上がりこそ、勢いは充分だった。カタールは試合開始を告げるカウントダウンを行うスタジアムDJの声を無視し、「3・2……」の辺りで吹かれた主審の笛に乗り、前のめりにキックオフ。
5バックの右に立つペドロ・ミゲルを中盤の内へ寄せておき、不意打ち感のあるキックオフでロングボールを蹴り込むと、エクアドル陣内へ奇襲をかけた。
カタールはその後も鋭いトランジションでボールを奪い返すなど、立ち上がりはアグレッシブさが表現されていた。
後手に回った開催国
ところが、前半3分のプレーから歯車が狂い始める。
11番のエースFWアクラム・アフィーフが左サイドからカットインを試みたが、エクアドルのMFメンデスにタックルを受け、ボールを奪われてしまった。
頼りのアフィーフがあっさりとやられたことに動揺が走ったのか、カタールは味方のトランジションが鈍く、カウンターで攻め込まれると、たまらず自陣でペドロ・ミゲルがファウルを犯した。
その後、エクアドルのフリーキックからのクロスを、カタールのGKサアド・アルシーブは空中戦で処理できず、ゴールへ押し込まれてしまう。
この場面はVARによって判定が修正され、ノーゴールになったが、以降のカタールはパワー、スピード、テクニック、あらゆる要素でエクアドルに後手を踏んだ。個々の局面に差があり、少し自信を失いながらプレーしている様子だった。
冷静なエクアドル
逆にエクアドルのほうは、冷静沈着だ。この試合のMVPに輝いたFWエネル・バレンシアは試合後、「タフなゲームだった。先制点を早く奪って、試合をコントロールしようと考えていた」と話す。
カタールは5-3-2を敷き、最終ラインの幅と、中盤の真ん中を集中的に抑える守備システムで構えたが、エクアドルのポゼッションはその中へ全く入って行かない。
4-4-2を敷くエクアドルは、ポゼッション時は3枚回しに変化して、真ん中よりもサイドに人を増やし、5-3-2のカタールを円で取り囲むように、安全圏でボールを回した。
そして、ここというタイミングでは、FWバレンシアやFWミカエル・エストラーダへ、中盤の頭を越えるロングパスを蹴る。自慢のFWを走らせ、カタールのDFと勝負をさせた。
カタールの5-3-2には狙いがあっただろう。しかし、「僕たちは明確なプランを持っていたが、忘れてはいけないのは、相手もそれを持っているということだ」とサンチェス監督は話す。
ハーフタイムに修正したが…
エクアドルがのらりくらりと、5-3-2を手玉に取るような攻め方に変えてきたにもかかわらず、カタールは黙って配置に立つだけ。前半16分にPKで先制され、31分に追加点を許した後もそれは変わらず、試合中に動くことができなかった。
あまりに退屈で、望みが薄い前半に絶望したのか、開幕戦に訪れたカタール側の観客は、ハーフタイムに激減し、後半は空席が目立つようになった。
後半はロッカールームで修正が入ったのか、カタールは5-3-2の両インサイドハーフが相手のサイドバックまで張り出し、高い位置で当てはめた。
ポゼッション時も中盤にFWアフィーフを下ろして運ぶなど、前向きさを取り戻したが、時すでに遅し。試合は2-0のまま再び動くことはなかった。
謎に包まれていたカタール
3年前にアジアカップ決勝で日本を破り、アジア覇者となったカタールを推す声は、大会前にもちらほら聞かれた。だがカタールは真の力を出し切ることなく、FIFA ワールドカップ史上初めて、開催国として初戦で敗れたチームになってしまった。
ワールドカップ予選が免除されていたこともあり、久方ぶりに見るカタールは、強いのか弱いのか。真の姿はベールに包まれた、謎のチームだった。
しかし、ワールドカップ未経験のカタールにとっては、そうした情報戦よりも、国際試合の緊張感を経験しておくことのほうが重要だったのだろう。たとえ、そのベールを事前に剥がすことになっても。
エクアドルは間違いなく強かった。それは9月に日本代表が苦戦したことでもわかっているし、こうやってカタールを圧倒することは想像できた。
とはいえ、カタールもここまで圧倒的な内容で敗れるべきチームではない。彼らのファン・サポーターの一部は、1試合目のハーフタイムに諦めてしまったが、2戦目、3戦目の反撃に期待しよう。(文・清水英斗)
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◇グループステージ 組み分け
【グループA】カタール、 エクアドル、セネガル、オランダ
【グループB】イングランド、イラン、アメリカ、ウェールズ
【グループC】アルゼンチン、サウジアラビア、メキシコ、ポーランド
【グループD】フランス、オーストラリア、デンマーク、チュニジア
【グループE】スペイン、コスタリカ、ドイツ、日本
【グループF】ベルギー、カナダ、モロッコ、クロアチア
【グループG】ブラジル、セルビア、スイス、カメルーン
【グループH】ポルトガル、ガーナ、ウルグアイ、韓国
◇日本戦情報
グループE 第1節 ドイツ vs 日本
11月23日(水) 日本時間 22時00分 キックオフ
ABEMA LIVE中継 21:00
NHK総合ほか LIVE中継 21:30
グループE 第2節 日本 vs コスタリカ
11月27日(日) 日本時間 19時00分 キックオフ
ABEMA LIVE中継 18:00
テレビ朝日系列 LIVE中継 18:40
グループE 第3節 日本 vs スペイン
12月2日(金) 日本時間 4時00分 キックオフ
ABEMA LIVE中継 3:00
フジテレビ系列 LIVE中継 2:00