レアル・マドリード所属のアセンシオとリュディガー。チェルシー所属のアスピリクエタとハフェルツ。ライプツィヒ所属のダニ・オルモとラウム。マンチェスター・シティ所属のロドリとラポルテ、ギュンドアン。
欧州ビッグクラブのチームメイトを互いに擁するスペインとドイツの一戦は、さすがに質が高いものになった。
スペインとドイツはどちらもボールポゼッション率が最も高い部類の2チームだが、志向はやや異なる。
今年8月に行った田中碧のインタビューから表現を借りるなら、スペインはボールを持ちたいチームで、ドイツは相手にボールを持たせたくないチーム。
結果としてポゼッション率が高まったとしても、ドイツのほうが対相手=相手を潰す、といったゲームの捉え方が根底にある。
スペイン優勢の前半
それを踏まえれば、この試合がボールを持つスペインと、プレスをかけるドイツの構図になるのは自然だった。互いに違和感なく、プレーしたはず。
前半はボールを持つ者が優勢だった。
4-3-3を敷くスペインは、ビルドアップ時に全体があまりポジションを動かさず、後ろが4枚のままでボールを動かす。センターバックの間にはGKウナイ・シモンも入る。相手のハイプレスに対して、ボールを逃がせる場所が多く、強みを持っている。
このスペインに対し、4-2-3-1のドイツは、トップ下のギュンドアンがブスケツへ、右ボランチのキミッヒがペドリへ、左ボランチのゴレツカがガビへと、中盤3枚にマークをかみ合わせた。そうして中盤を封じた上で、ドイツは前線のミュラー、ニャブリ、ムシアラが、4バックへプレスをかける。
しかし、スペインは最終ラインが4対3で優位があり、GKシモンもビルドアップ巧者であるため、ドイツのプレスを丁寧に剥がした。
巧みな左サイド
特にジョルディ・アルバ、ラポルテ、ペドリの左サイドは巧みだ。前へ出て、相手をプレスバックさせ、空いたブスケツやCBへバックパスを出し、一歩ずつ前進する。前と後ろにボールで揺さぶりをかけることで、ドイツのプレスを無力化した。
右サイドのカルバハルは、この試合のパス50本の行き先のうち、25本が右センターバックのロドリ、2番目に多い行き先がGKシモンで5本と、状況を打開するパスは少なかった。
しかし、左のアルバはパス57本のうち、12本をFWダニ・オルモへ、9本をペドリへ通している。ペドリとガビ、左右インサイドハーフの個性の違いもあるが、左サイドから局面を打開して運ぶパターンが、スペインはよく機能していた。
モラタのゴール
後半17分のスペインの先制シーンは、中盤でフリーになったブスケツから、ライン間へ入ったダニ・オルモを経由し、アルバからのアーリークロスに、モラタがニアサイドで巧みに合わせた。
ダニ・オルモへパスが通った時点で、ドイツの右サイドバック、ケーラーは1対2の数的不利であり、アルバへ素早く寄せられなかった。
スペインの中盤の誰かがフリーになりそうなら、素早く動的5バックを形成したいところ。日本の場合は伊東純也にその役割、アルバ番が任されることになるだろうか。
ただし、ドイツもやられっぱなしではなかった。後半はより高い位置から、CBにボールを持たせないようにハイプレスをかけ、後半11分にはキミッヒのインターセプトから、再びキミッヒがシュート。GKシモンのビッグセーブが出たが、間違いなく決定機だった。
カウンターから同点に
同点弾もカウンターだ。後半38分にはスペインのパスミスを、ケーラーに代わって出場したクロスターマンが拾ってカウンターへ。サネ、ムシアラを経由し、最後はフュルクルクが豪快にシュートを突き刺した。
スペインとは言ってもミスはするし、カウンターのチャンスはある。また、前半40分にフリーキックからリュディガーがヘディングで合わせた場面は、オフサイドにはなったが、ラポルテ1人が下がってオフサイドラインを崩しており、スペインの連係不安をのぞかせた。
ロドリ、ラポルテにはビルドアップの安定感があるとはいえ、守備局面はすきがある。日本はセットプレーでも、カウンターの流れの中でも、相手のラインを壊す動きをアグレッシブに行いたいところだ。(文・清水英斗)
FIFA ワールドカップ 2022 - グループE 第2節 スペイン 1-1 ドイツ
【得点者】
アルバロ・モラタ(スペイン) 後半17分
ニクラス・フュルクルク(ドイツ)後半38分
【日本の決勝トーナメント進出条件】
日本は次節のスペイン戦に勝てば2位以内が確定し、決勝トーナメント進出が決まるが、負けた場合には自動的に敗退が決定。
もし日本が引き分けの場合には...
コスタリカがドイツに勝利すると、日本が敗退し、コスタリカとドイツが引き分ければ日本は得失点差でコスタリカを上回り、決勝トーナメント進出が決まる。
ドイツがコスタリカに勝利すると、日本とドイツが勝ち点で並ぶため、得失点差などで争うことになる。
ドイツが2点差以上で勝てば、得失点差で日本を上回り、日本が敗退。
ドイツが1点差の勝利なら、得失点差で日本と並び、総得点で争うことになる。
総得点でも並んだ場合には、ドイツに直接対決で勝利している日本が決勝トーナメント進出となる。
ーーー
FIFAワールドカップ カタール2022が 11月20日開幕!22回目となるスポーツ界最大級の祭典は史上初めて中東、冬開催の大会となる。1試合の交代枠が5人、登録選手も各チーム26人とルール変更もあり、新たなFIFAワールドカップとして記憶される大会となりそうだ。日本はFIFAワールドカップ フランス 1998から7大会連続7度目の出場となる。2002、2010、2018の3大会でベスト16に進出している。初のベスト8以上という目標を掲げて挑む森保ジャパンだが、ドイツ、コスタリカ、スペインと同居するグループリーグは過去最高に厳しい組み合わせとなった。強豪相手に如何にして戦うのか注目が集まる。
◇グループステージ 組み分け
【グループA】カタール、 エクアドル、セネガル、オランダ
【グループB】イングランド、イラン、アメリカ、ウェールズ
【グループC】アルゼンチン、サウジアラビア、メキシコ、ポーランド
【グループD】フランス、オーストラリア、デンマーク、チュニジア
【グループE】スペイン、コスタリカ、ドイツ、日本
【グループF】ベルギー、カナダ、モロッコ、クロアチア
【グループG】ブラジル、セルビア、スイス、カメルーン
【グループH】ポルトガル、ガーナ、ウルグアイ、韓国
◇日本戦情報
グループE 第3節 日本 vs スペイン
12月2日(金) 日本時間 4時00分 キックオフ
ABEMA LIVE中継 3:00
フジテレビ系列 LIVE中継 2:00