グループステージを突破したチームに弱者はいない。ラウンド16の戦いは、必ず激戦になるものだ。
1986年大会以来の、そしてリオネル・メッシを擁するチームとして初めての栄冠を狙うアルゼンチン代表は、もちろん弱者ではない。
そして、オーストラリアもまた、弱いチームではない。地獄の大陸間プレーオフで南米代表を下し、本大会では前回王者に木っ端微塵に砕かれる敗戦からのスタートとなりながら、逞しく粘り強く勝ち残ってきた。
メッシの先制点
前半から展開されたのは、ノックアウトステージ特有の緊張感を伴う、互いにリスクを避けながらの攻防だった。
オーストラリアはボールを持つこともできるチームだが、この日はアルゼンチンを向こうに回すということで、明らかに割り切って試合に入っていた。前半15分までの支配率は20%を割り込むほどである。
ボールを持たれながらも決定機は許さない展開は、オーストラリアのプラン通り。ただ、アルゼンチンには神様から贈り物をもらった背番号10がいる。
前半35分、セットプレーの流れで相手の守備陣形が乱れていたわずかな隙を、抜け目ない試合巧者が突く。オタメンディの落としも巧みだったが、受けた選手がこの男でなければゴールにはなっていないだろう。
ボールに寄っていくスピードのままに、滑らかな振りから繰り出された左足シュートは、DFスターの股間を抜けてコロコロとゴールネットへ。
明らかに異質なタイミングで放たれたシュート、しかもDFの陰から飛んできたそれに、アジア屈指のGKライアンも反応し切れず。ゴールネットは揺れた。
アルゼンチンが追加点
前半途中、そして後半に入ってからは、本来のスタイルに寄せて攻撃の糸口を見出そうとするオーストラリアだが、アルゼンチンはそこも見逃してくれなかった。
後半12分、ペナルティエリア内でボールを受けて丁寧に繋ごう、運び出そうと試みたGKライアンにMFデ・パウルが猛然と襲いかかると、こぼれたボールに反応していたのはFWアルバレス。
抜け目ない男がゴールをかっさらう形で、アルゼンチンに2点目が生まれた。
守護神のビッグセーブ
オーストラリアに勝機は乏しいと思われた展開だったが、苦しい試合を何度も抜け出してきたチームは諦めない。後半32分、こぼれ球を拾ったFWグッドウィンのロングシュートは無謀に思えたが、アルゼンチンDFに当たってコースが変わり、ゴールへと吸い込まれていった。
1点差に迫ったオーストラリアは攻勢を仕掛ける。近年習得に取り組んできた、後方から丁寧にビルドアップするスタイルをかなぐり捨て、ロングボール主体の猛烈なパワープレーも仕掛けたが、アルゼンチンも粘って跳ね返し続ける。
そしてアディショナルタイムも残り僅かとなった90+7分には、途中出場のFWクオルがクロスを受けてDFを巧みにかわし、右足での決定的シュートを放つ。
だが、ここはアルゼンチンの守護神マルティネスが猛然と飛び出した上で、左手一本のビッグセーブ。粘るオーストラリアの希望を断ち切り、アルゼンチンが8強へ名乗りをあげた。(文・川端暁彦)
FIFA ワールドカップ 2022 - ラウンド16 第-節 アルゼンチン 2-1 オーストラリア
【得点者】
リオネル・メッシ(アルゼンチン) 前半35分
フリアン・アルバレス(アルゼンチン) 後半12分
マシュー・ライアン(オーストラリア)後半32分
ーーー
11月20日に開幕したFIFAワールドカップ カタール2022もラウンド16に突入。22回目となる今大会は史上初めて中東での冬季開催となっている。1試合の交代枠が5人、登録選手も各チーム26人とルール変更もあり、判定にも半自動オフサイドテクノロジーが導入される等、新たなFIFAワールドカップとして記憶される大会となりそうだ。
日本はFIFAワールドカップ フランス 1998から7大会連続7度目の出場、2002、2010、2018の3大会でベスト16に進出している。初のベスト8進出という目標を掲げて挑む森保ジャパンだが、ドイツ、コスタリカ、スペインと同居するグループリーグは過去最高に厳しい組み合わせとなった。しかし、優勝経験国であるドイツ、スペインを撃破し世界を震撼させての1位通過を決めた。『新しい景色』を目指してクロアチアと対戦する。
◇決勝トーナメント ラウンド16(全て日本時間)
12/4(日) 0:00 オランダ vs アメリカ
12/4(日) 4:00 アルゼンチン vs オーストラリア
12/5(月) 0:00 フランス VS ポーランド
12/5(月) 4:00 イングランド VS セネガル
12/6(火) 0:00 日本 VS クロアチア
12/6(火) 4:00 ブラジル VS 韓国
12/7(水) 0:00 モロッコ VS スペイン
12/7(水) 4:00 ポルトガル VS スイス
◇日本戦情報
決勝トーナメント 第1戦 日本 vs クロアチア
12月6日(火) 日本時間 00時00分 キックオフ
フジテレビ系列、ABEMAで生放送・配信予定