勇敢な挑戦者モロッコと最強フランス、素晴らしき準決勝は前回王者に軍配【FIFA ワールドカップ 2022 準決勝 ハイライト】

FIFA ワールドカップ 2022 - 準決勝 フランス - モロッコ

勇敢な挑戦者モロッコと最強フランス、素晴らしき準決勝は前回王者に軍配【FIFA ワールドカップ 2022 準決勝 ハイライト】

2022.12.15 ・ 海外サッカー

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 相手を警戒して「勝利の方程式」を崩したことが、わずかな隙を生んだのかもしれない。


 モロッコは今大会において4−1−4−1のシステムを採用し、センターFWが相手アンカー(もしくはボランチ)を背中側に置いて消しながら、インサイドハーフが相手センターバックにプレスをかける「勇気溢れる守備」でベルギー、スペイン、ポルトガルを倒すというジャイアントキリングを起こしてきた。



エムバペ、デンベレを警戒しての対応が裏目に


 準決勝に到達するまでに喫した失点は、カナダ戦のアンラッキーなオウンゴールのみ。ボールが動くたびに誰かが前に出て、他の誰かが下がる――その連動性は今大会で最も美しいプレスだった。


 しかし、準決勝の相手はフランスである。左にエムバペ、右にデンベレという一発で局面を変えられる突出した個人がいる。レグラギ監督はそこにしっかりフタをしたいと考えたのだろう。フランス戦では4バックではなく5バックを採用し、モロッコは今大会初めて5−4−1でスタートした。


【ポルトガル戦】4−1−4−1

GK:ブヌ

DF:ハキミ、ヤミーク、サイス、アティヤト・アラー

MF:アムラバト

MF:ツィエク、ウナヒ、アマラー、ブファル

FW:エンネシリ


【フランス戦】5−4−1

GK:ブヌ

DF:ハキミ、ダリ、サイス、ヤミーク、マズラウィ

MF:ツィエク、ウナヒ、アムラバト、ブファル

FW:エンネシリ


 これまで採用してきた4−1−4−1はアムラバトがアンカーの位置に入って「掃除機役」になるため、中盤の4人が後ろを気にせずに勢い良くボールにアタックすることができた。いわば「前に重心がある守備」だ。


 一方、フランス戦で採用した5−4−1は、後ろを保証するアンカーがいないためプレスの出足が鈍るが、最終ラインに5人いるのでサイドをカバーできる。「後ろに重心がある守備」だ。


 だが、この戦術変更は裏目に出たと言わざるをえない。前半5分、早くもゴールをこじ開けられてしまう。


 フランスのボランチのフォファナテオが右センターバックのヴァランにバックパスしたとき、モロッコのセンターFWエンネシリは相手ボランチのチュアメニをしっかり背中で消しており、いつもの4−1−4−1ならここで左インサイドハーフのアマラーがボールにアタックしているはずだった。


 再三書いたように、この日のモロッコは5−4−1だ。ボランチには左にアムラバト、右にウナヒが入っていたが、アムラバトは深い位置を取っていたためヴァランに対してプレスをかけに行けなかった。


 ヴァランは隙を突き、右斜めにドリブルを開始する。慌ててエンネシリが追いかけたが、ヴァランにはじっくり前方を見る時間ができた。


 その瞬間、グリーズマンが後方へ戻るフリをしてモロッコDFのヤミークを釣りだし、踵を返して裏へ飛び出した。ヤミークは完全にフェイントへ引っかかって倒れてしまう。ヴァランがスルーパスを出すと、グリーズマンがグラウンダーのパスで中央へ折り返し、エムバペのシュートは相手に当たったが、後方から上がってきた左サイドバックのテオ・エルナンデスがこぼれ球をジャンピングボレーで豪快にネットに突き刺した。



失点後、モロッコが猛反撃


 前半5分で0対1。カウンターを得意とするフランスにリードを許した時点で、モロッコは苦しい状況に追い込まれたと言わざるをえなかった。Optaによればフランスは過去のW杯において、リードした状態でハーフタイムを迎えた試合は1度も負けていない。


 だが、ここからのモロッコの反撃は、まさに「アトラスのライオン」だった。


 前半10分、今大会最大の発見と言われるウナヒがマズラウィとのワンツーで中央へ侵入すると、得意のドリブルから右足でシュート。惜しくもロリスのセーブに弾かれたが、相手ゴールを脅かした。


 前半17分にモロッコはロングボールの処理を誤り、ジルーに抜け出されて左足でシュートを打たれたが、ヤミークが身を呈したスライディングでコースを消し、ボールはポストを直撃。ぎりぎりで失点は間逃れた。


 前半21分、DFリーダーのサイスが足を痛めて交代を求めると、レグラギ監督はMFアマラーを投入していつもの「強気の4−1−4−1」に戻すと、モロッコはさらに攻撃の圧力を高める。


 前半44分、ツィエクのCKがジルーの頭に当たってゴール前で高く上がると、ヤミークがいち早く反応してオーバーヘッド。惜しくもボールはポストを直撃した。


 後半8分、ブファルがツィエクとのワンツーで右サイドを突破してクロス。惜しくもエンネシリには合わなかったが、これも決定機だった。



##H2フランスの強固な守備、そしてエムバペ:##


 結局、モロッコが13本ものシュートを放ちながらもゴールラインを割れなかったのは、フランスの守備がそれ以上に素晴らしかったからだ。3試合ぶりに先発に抜擢されたセンターバックのコナテが194cmの長身を生かしてモロッコの高さを封じ、ポルトガル戦でゴールを決めたエンネシリは3回しかボールに触れなかった。


 右サイドバックのクンデは「第3のセンターバック」として、ペナルティエリア内で抜群の存在感を放った。地味に効いていたのはグリーズマンの献身的な戻りだ。トップ下にもかかわらず攻め込まれた際にはペナルティエリア内まで戻り、セカンドボールのクリアに貢献した。


 勝負を決したのは、やはりエムバペだった。


 後半34分にエムバペがペナルティエリア内で4人をかわして、右横に優しくパス。途中交代のコロムアニが悠々と流し込んで、フランスの2点目が決まった。


 だが、スコアこそ0対2になってしまったが、点差には現れない奮闘をこの日のモロッコが見せてくれたことは間違いない。


 試合後、レグラギ監督はともにグルノーブルでプレーしたジルーと穏やかな表情で言葉をかわした。モロッコにとって持っている力のすべてを出した、悔いのない準決勝だったのではないだろうか。(文・木崎伸也)



FIFA ワールドカップ 2022 - 準決勝 フランス 2-0 モロッコ


【得点者】

エルナンデス(フランス) 前半5分

ムアニ(フランス) 後半34分



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11月20日に開幕したFIFAワールドカップ カタール2022もついにクライマックス。22回目となる今大会は史上初めて中東での冬季開催となり、1試合の交代枠が5人、登録選手も各チーム26人とルールも改定、判定にも半自動オフサイドテクノロジーが導入される等、様々な試みがFIFAワールドカップに新しい魅力をもたらした。


誰も止められないエース・エムバペ擁する優勝候補筆頭フランス、世界王者へラストチャンスに賭けるメッシ率いるアルゼンチン、闘神モドリッチを中心に圧倒的な勝負強さを見せるクロアチア、そしてアフリカ、アラブの期待を一身に背負って台風の目となったモロッコ。どのチームが来ても決勝カードは間違いなく面白くなりそうな4チームが残ったFIFAワールドカップ2022準決勝、引き続きご注目いただきたい。


◇決勝トーナメント 準決勝(全て日本時間)

12/14(水) 4:00 アルゼンチン vs クロアチア

12/15(木) 4:00 フランス vs モロッコ

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