3位決定戦でクロアチアがモロッコに2対1で競り勝ち、有終の美を飾る【FIFA ワールドカップ 2022 3位決定戦 ハイライト】

FIFA ワールドカップ 2022 - 3位決定戦 クロアチア - モロッコ

3位決定戦でクロアチアがモロッコに2対1で競り勝ち、有終の美を飾る【FIFA ワールドカップ 2022 3位決定戦 ハイライト】

2022.12.18 ・ 海外サッカー

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3位決定戦は、重要ではない試合の中では、最も重要な試合だ。


準決勝に敗れ、夢敗れ、ショックに打ちひしがれた二つのチームが再びピッチに立たなければならない。「3位を決めることに何の意味があるのか?」と囁かれながら。すでに身体は限界を越えている。身も心もぼろぼろだ。


それでも、この試合に負けると非常に後味が悪い。準決勝、3位決定戦と連敗して大会を去ることは、ベスト4に輝いたにもかかわらず、まるでチームが失敗に終わったような印象を与えてしまう。それは東京五輪の日本も同様だった。


ただやっぱり、3決は3決。これが決勝なら無理をしたかもしれないが、3決では両チーム共にコンディション不良から、出場を回避する選手が出た。


試合前の記者会見で、モロッコのレグラギ監督は3位決定戦について、「試合に勝利すること、これまでに出場していなかった選手をプレーさせること。この二つをミックスさせて戦う」と試合の目的を語った。


モロッコはマズラウィがベンチ外となり、サイスとウナヒはベンチに控えた。代わってアティヤットアラー、サビリ、エルハヌスがスタメンへ。準決勝から3人を入れ替えている。


モドリッチの縦パス


主力選手が満身創痍であるのは、クロアチアも同様だった。ロブレン、ソサ、ユラノビッチ、ブロゾビッチ、パシャリッチの5人が出場を避け、代わってスタニシッチ、シュタロ、マイェル、リヴァヤ、オルシッチがスタメンに名を連ねた。


ただし、モロッコがシステムを4-3-3で固定し、チームの戦い方をそのまま踏襲したのに対し、クロアチアは4-4-2に変更し、この試合向けの戦術を練ってきた。この辺りは準決勝から中3日と、モロッコより1日多い準備期間が功を奏したはず。


クロアチアは2トップのリヴァヤとクラマリッチが縦関係となり、攻撃時は相手アンカーのアムラバトの脇で、スペースに顔を出す。そこへ縦パスをズバズバと刺し込んだのが、モドリッチだ。


ダブルボランチを形成したモドリッチとコバチッチは、あまり高い位置を取らず、深い位置で相手の中盤ラインを引き出した上で、2トップへの縦パスを積極的にねらって行く。これまでのクロアチアとは、少し違う顔を見せた。


モロッコを混乱させたクロアチア


モロッコは、クロアチアのビルドアップに惑わされ、今まで見せてきたブロックのコンパクトさが消えてしまう。


レグラギ監督はコーチングエリアからしきりに、1トップのエンネシリや、インサイドハーフのエルハヌス、サビリへ指示を送り、モドリッチを深追いせずにブロックで待ち構えるように伝えていたが、なかなかうまくはまらなかった。


サビリとエルハヌスの位置を逆にしたり、前半の終盤にはサビリとアムラバトを並べてダブルボランチに変えたりと、ずっと試行錯誤していた。メンバーが代わったこともあり、クロアチアの揺動にうまく対応出来なかった。試合後にレグラギ監督も、前半の不出来を認めている。


また、モロッコのビルドアップに対しても、クロアチアはクラマリッチが相手アンカーのアムラバトをマンマーク。起点に制限をかけ、モロッコを不自由にした。縦関係の2トップは、攻守両面でねらいがはまっていた。


練られたFKで先制


こうしたクロアチアの用意周到さを、最も印象付けたのが、前半7分のフリーキックによる先制シーンだろう。


モドリッチが蹴ると見せかけ、マイェルがペナルティーエリア左へ浮き球のパス。これをペリシッチがヘッドで中へ折り返すと、走り込んだグヴァルディオルがダイビングヘッド。美しい空中戦で先制点が決まった。


マイェルが左利きであるのがポイントだった。蹴ったボールが中へ入ってくる軌道になる。逆に右利きがあれを蹴ると、外へ逃げるボールになるため、ペリシッチが頭で折り返すのは難しい。マイェルの左利きならではの軌道、抜群の精度が光っていた。


直後にモロッコもフリーキックのこぼれ球から同点に追いついたが、前半42分にはクロアチアのオルシッチのゴールで再び勝ち越し、これが決勝点となった。


3位決定戦の重要性


やはり1日の準備の差は大きく、クロアチアは戦術的にモロッコを勝っていた。


ただ、もしかすると、それだけではないのかもしれない。この3位決定戦をどのように捉えたか。クロアチアのダリッチ監督は、試合後に次のように振り返っている。


――クロアチアは1998年のワールドカップで銅メダルを獲得しています。それは国民にとってどのような意味があったのでしょうか? また、現在のあなたにとって銅メダルはどのような意味を持つのでしょうか?


「当時のメダルは、クロアチアにとって初めてのメダルであり、当時はとても大きなことで、記念碑のようでした。独立を宣言したばかりのクロアチアという国にとって、とても大きな意味を持つものだったのです。このとき、世界はクロアチアのサッカーを知ることになり、栄光の時代が始まりました」


「今は少し状況が変わり、(2018年に)銀メダルも獲得しています。しかし、ワールドカップは新たな挑戦であり、意味があります。この新しいメダルで、クロアチアの人々に喜びを与えたい。このワールドカップで3位になって帰ることは、私たちにとって非常に重要なことなのです。3位で終わるか、4位で終わるかは、大きな違いでした」


「1998年の成功は、私たちにとってどれほど大きなものだったのか、みんな覚えています。その後、クロアチアでプレーした私たちはみんな、あの成功を繰り返したいと常に思っていました。だから、ひとつひとつのメダルは大きな意味を持つし、私たちにとっても、クロアチアという国にとっても、素晴らしいことなのです」


ダリッチ監督の言葉は、不屈のクロアチア、どんなときでも前を向こうとする彼らの強さを示している。それが、この重要ではない試合の中では最も重要な、3位決定戦で力を発揮した。


ビバ、モロッコ!


モロッコは負けた。ただし、だからと言って、彼らが今大会で成し遂げたことが色褪せるわけではない。最後にレグラギ監督の言葉を紹介しておこう。


「国王が街頭で、一般市民と勝利を祝うために出てきたという事実は、私たちが大きな影響力を持ち、この1カ月間、みんなをひとつにしたことを表しています。私たちはこれから、アフリカ大陸の中でもプレッシャーを受ける存在になるでしょう。選手たちにも言いましたが、我々は世界の王になる前に、ホームの王にならなければならない。ワールドカップを通じての皆さんのサポートに感謝します。ここにいられて良かった。ビバ、アフリカ! そして、ビバ、モロッコ!」(文・清水英斗)



FIFA ワールドカップ 2022 - 3位決定戦 クロアチア 2-1 モロッコ


【得点者】

グヴァルディオール(クロアチア) 前半7分

ダリ(モロッコ) 前半9分

オルシッチ(クロアチア) 前半42分


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11月20日に開幕したFIFAワールドカップ カタール2022もついにクライマックス。22回目となる今大会は史上初めて中東での冬季開催となり、1試合の交代枠が5人、登録選手も各チーム26人とルールも改定、判定にも半自動オフサイドテクノロジーが導入される等、様々な試みがFIFAワールドカップに新しい魅力をもたらした。

誰も止められないエース・エムバペ擁する前回チャンピオンにして優勝候補筆頭フランスと、世界王者へラストチャンスに賭けるメッシ率いるアルゼンチンが決勝で激突。

闘神モドリッチを中心に圧倒的な勝負強さを見せるクロアチア、そしてアフリカ、アラブの期待を一身に背負って台風の目となり大会を盛り上げたモロッコが3位の座をかけて激闘を繰り広げる。最終局面を迎えたFIFAワールドカップ2022決勝と3位決定戦、お見逃しなく!


◇決勝トーナメント 決勝&3位決定戦(全て日本時間)

12/19(月) 0:00 フランス vs アルゼンチン

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